症状別漢方紹介

漢方薬で風邪対策《知って得する漢方5_’07.1》

カゼに用いられる漢方薬では葛根湯(かっこんとう)が有名です。しかしカゼには,さむけ,咳,鼻水,頭痛,発熱など様々な症状があり,すべての症状に葛根湯が効くわけではありません。体質の考慮も大切です。
カゼの初期段階は漢方的に2つの型に大別することができます。ポイントはさむけが強いか熱感が強いかです。

①さむけを伴うカゼ

ゾクゾクとして首筋がこわばるような感じがして「あれっカゼかな」というとき,まさに葛根湯の出番です。体を温めて,カゼのウイルスとの攻防を手助けしてくれます。さらに葛根湯には,筋肉のこわばりを緩めたり,発汗を促す作用があります。もしこのとき,すでに発汗があったり体質が虚弱な場合には,葛根湯の効力が強すぎて体に負担になることがあります。このような場合にはより穏やかな桂枝湯(けいしとう)や参蘇飲(じんそいん)などが選択されます。また水っぽい鼻水や痰が多い場合には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)がよく効きます。小青竜湯は水鼻を目標に花粉症などにも応用されます。頭痛が主体のカゼには川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)を用います。川芎茶調散はお茶の葉が含まれる珍しい処方です。

②熱感の強いカゼ

さむけよりも熱感が強い場合があります。高熱や咽の痛みを伴うこともあります。このような時には消炎作用に優れる金銀花(きんぎんか)や連翹(れんぎょう)を含む銀翹散(ぎんぎょうさん)を用います。また咳が強い場合には麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)を使います。

左:5月頃,川べりで甘い香りを放ちながら花開くスイカズラ。花雷が生薬の金銀花に。
右:庭木に多用されるレンギョウ。果実が生薬の連翹に。

③その他

その他,激しい症状が治まった後も,こじれてなかなかカゼが抜けきらない場合には小柴胡湯(しょうさいことう)などを選択します。また嘔吐や下痢などの胃腸症状を伴う場合には藿香正気散(かっこうしょうきさん)を用います。

※今回はたくさんの漢方薬が登場しましたが,カゼの漢方薬はまだまだたくさんあります。カゼと一括りにされる病気には,それだけたくさんのパターンがあり,それぞれに応じた漢方薬が用意されているということだと思います。まずはよく専門家とご相談の上,お選び下さい。