症状別漢方紹介

耳鳴りの 漢方薬《知って得する漢方18_’08.2》

前回の『疲れ目・かすみ目の漢方薬』では,『肝は目に竅(あな)を開く』と言われ,肝の状況が目に現れやすいことをご紹介しました。同様に『腎は耳に竅を開く』という言葉あり,耳の問題には腎が関わっていることが少なくありません。下表にある通り,腎は生命力を蓄える場所であり,特に加齢に伴う耳鳴りや難聴は,腎の衰えを考慮する必要があります。

五臓 主な働き 竅(あな)
血液を蓄える。自律神経系
血を全身に送る。こころ。
消化吸収。
呼吸活動。
生命力を蓄える。水分代謝。
成長・生殖・老化などに関与

しかしながら,耳鳴りはすべて腎の問題かというと,そうとは限りません。それはストレスや感染症,血行不良,過労や胃腸虚弱などによっても生じることが古来観察されてきているからです。そのため,耳鳴りの時に用いる漢方薬を選択するには,耳鳴りの状況に加え,随伴する症状や体質をも検討して原因を探らなくてはなりません。

耳鳴りの漢方薬

とくに多く見られるタイプの漢方治療をご紹介します。

  • 加齢の要素が強く,難聴やときに腰痛を伴い,手足のほてりや口の渇きがある場合には,腎を補う六味地黄丸(ろくみじおうがん)や耳鳴丸(じめいがん)を選択。冷える場合には八味地黄丸(はちみじおうがん)が用いられる。耳鳴りは夜間に悪化する傾向がある。
  • 精神的ストレスが強く,イライラして,甚だしい時には顔ののぼせや目の充血を伴うケースでは,精神神経系を落ち着かせる加味逍遙散(かみしょうようさん)や竜胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)が用いられる。比較的高音の耳鳴りが特徴。
  • めまいや吐き気も強く,耳の閉塞感を伴う場合には,体の水分代謝を改善する半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などが使用される。

その他,状況に応じて様々な漢方薬が利用されます。適切に選択しないと,逆に悪化させてしまうことがありますので,専門家とよくご相談の上,ご使用下さい。