症状別漢方紹介

体を温める生薬と食材《知って得する漢方29_’09.1》

寒い冬の日には温かい食事をしたくなりますね。私の薬局でも,寒さによる感冒,腰痛,冷え症,頻尿といった症状のご相談が増えますので,体を温める生薬が活躍します。ところが,冬でもアイスクリームや冷たい飲み物を飲食する習慣のある方は意外と少なくありません。

体を温める生薬・食材とは

漢方で使用される生薬は,体を温めるものであるのか,冷やすものであるのか,それともどちらでもないのかといった性質が決められています。この性質は体に合う漢方薬を選択する上で重要な要素です。例えばショウガを乾燥させた生薬「生姜(しょうきょう)」や有名な「高麗人参」は体を温めて体力を充実させます。また,クチナシの実を乾燥させた生薬「山梔子(さんしし)」は体を冷やすとされ,ほてりや焦燥感に使用されます。

このような性質の分類は,先人達の経験によるもので,主要な生薬については二千年前には確立していました。その後も様々な生薬やさらには食材においてもこの経験則が蓄積され,今日の治療や食養生に活用されています。

食材について大まかに言いますと,水分の多い物や夏野菜,南国の果物などは体を冷やすものに含まれます。また冬に多く出回る白菜や大根も冷やすものとして分類されています。ただし白菜や大根でも温かく調理をしていただければ,体を温めることができます。同時にネギ,ニラ,ショウガ,唐辛子など,体を温めるとされる物と一緒に調理すれば,より温まります。昨年11月の本欄では,旬の素材が健康によいというお話しをさせていただきましたが,やはり基本はそこにあると考えます。

大豆や魚,肉などのタンパク質は,血や肉のもとになる物で,その消化や代謝の過程で熱が多く産生されます。全体のバランスを考えながらタンパク質も採りいれましょう。

とにかく冷えてお困りの方は温かい食事を心がけることが大切です。せっかく温かい食事をしても,デザートに冷たい果物やアイスクリームでは意味がなくなってしまいます。ところで,逆に体がほてってお困りも方もいらっしゃいます。このような方は唐辛子などの香辛料は控えるべきです。ほてりの原因を考えて対処する必要があります。

さていよいよ温かい食事を前にした時,食事ができるまでの多くの手間や苦労,さらには自然の恵みに感謝して「いただきます」を言いたいものです。体だけでなく,心も温まるでしょう。