症状別漢方紹介

目に効く名前の生薬《NaturalLife22_’12.6》

目の充血や炎症,かすみ目,疲れ目,ドライアイなどの様々な目の症状に対して,漢方薬や民間薬の世界では,数多くの生薬が昔から利用されてきました。そのような生薬の中には,効き目がそのまま名称となっている物があります。そのいくつかをご紹介します。

■決明子(けつめいし):決明子はマメ科のエビスグサの種子を乾燥させたものです。後漢代(一~二世紀)に著されたといわれる薬物書には「青盲(現代の緑内障に相当すると思われる)や充血,流涙などを治し,長く服用すると目の輝きを益す」と書かれています。目の見え方を改善する働きを中国では明目(めいもく)作用と呼び,決明子の名は優れた明目作用に由来すると考えられています。決明子はその他に通便作用もあり,現在緩下剤として医薬品に指定されています。

■石決明(せきけつめい):“石”という字を冠していますが,実際はアワビの貝殻です。中国では消炎作用や鎮静作用があるとされ,血圧上昇やのぼせに伴う目のくらみ,ふらつき,頭痛,耳鳴りなどの治療薬に配合されます。

■夜明砂(やみょうしゃ):コウモリの一種であるキタヒナコウモリの糞を乾燥した物です。ビタミンA様の物質が含まれており,中国では薄暗くなると視力が落ちる夜盲症に効果的と言われています。

■メギ:古来、民間的に目の炎症に対して用いられてきたために“目木”と呼ばれます。幹や根を煎じて目を洗浄したり,内服して健胃薬・整腸薬とする方法が伝えられていますが,現在ではあまり利用されません。メギ科の代表種でトゲの目立つ落葉低木です。

■メグスリノキ:日本では昔から“目薬の木”としてただれ目などに利用されてきたようです。肝臓にも良いといわれますが,体質的な向き不向きは明らかではありません。ただ中国医学では「肝の状態は目にあらわれる」と言われるほど,目と肝との結びつきは強く,目に作用するものは肝にも作用すると考えられます。メグスリノキは非常に苦味が強く,消炎作用があると思われますが,法律上はあくまで食品です。健康茶としてご利用下さい。
メグスリノキ
メグスリノキ 昨年11月 つくば市 で撮影。紅葉しています。
カエデ科の植物です。切れ込みが深くなって3枚の小葉で1枚の葉となります。