症状別漢方紹介

冷え症の生薬について《NaturalLife27_’12.12》

先月は特別編として冷え症のタイプ分けと対策をご紹介しました。数多くご感想をいただき,嬉しく拝見しております。ありがとうございました。

今回はその中で触れた生薬の補足をさせていただこうと思います。生活の中で触れたり見聞きしたりする機会のある物を由来としている生薬を挙げています。

まずタイプを簡単に振り返ります。Aの陽気不足。これは体温を維持する力が不足しているタイプです。Bは血の不足タイプ。体の各組織に栄養を送り届ける血の不足です。Cは気の巡りの失調。自律神経などのバランスの崩れが考えられ,ストレスの影響も強いです。そしてDは血行不良タイプです。

Aのタイプに用いる生薬として高麗人参と鹿の角を挙げました。高麗人参はウコギ科オタネニンジンの根で,気力・体力を補うのに優れます。調整法の違いで,数種の高麗人参があります。乾燥させただけの生干人参(きぼしにんじん),湯通しした御種人参(おたねにんじん),蒸し上げた紅参(こうじん)などが有名です。湯通しをすると断面が飴色になり,より体の中心を温め補う力が増します。また蒸すと赤褐色となり,さらに作用が強化されます。

鹿の角は採取する時期が大切です。角は雄にのみ生え,毎年生え替わります。春のまだ生えたての幼角は鹿茸(ろくじょう)と呼ばれ,最も効果があり,高価でもあります。生えきった角は鹿角(ろっかく)と呼ばれ,安価で鹿茸の代用です。鹿茸は婦人科機能の向上にも役立ち,不妊症などでも多用されます。

Bのタイプではロバ皮のゼラチンをご紹介しました。ロバはウマ科の動物のロバです。その皮の煮こごりを生薬とするのです。血を補う作用と,出血を止める作用があります。

Cタイプで紹介した紫蘇には,気の巡りをよくするリフレッシュ作用,穏やかな発汗作用,解毒作用などがあり,カゼなどにも時折使用します。みかんの皮は陳皮(ちんぴ)といい,七味唐辛子にも入っていますね。陳には古いという意味がありますが,陳皮は古い物ほど価値が上がると言われる不思議な生薬です。胃腸に作用するため,食欲不振や消化不良の時などにも多用されます。

Dの桃の種仁とは,桃のタネの中心部分です。同属植物アンズの種仁も生薬になり,ともにアーモンドに似ています。桃の種仁は血行改善に,アンズの種仁は呼吸器疾患に多用されます。

いろいろなタイプにまたがった方もおられることでしょう。むしろその方が普通です。比重を考えて,適宜組み合わせた対策をとることが必要です。