症状別漢方紹介

高血圧の漢方薬

血圧は体の状態を知る大切なバロメーター。最近では家庭用のデジタル血圧計が広まり、自分で毎日チェックしている人も少なくありませんね。ただ、血圧はちょっとした心理変化・動作・姿勢などで大きく変動するため、正確に把握するのは意外と難しいものです。高血圧症では、のぼせ、頭痛、頭重、めまい、耳鳴り、肩やうなじのこりなどの症状が現れやすくなります。

私たちの血管は、長い年月を経る間に次第に柔軟性を欠き硬くなって行きます。いわゆる動脈硬化です。血圧が高値の場合、動脈硬化の進行が早くなると言われています。動脈硬化が強度になると、動脈の内部が細くなり、血液の流れが悪くなります。その結果血管の豊富な臓器の機能が障害されてきます。この影響を受けやすいのが、脳、心臓、腎臓です。大切な臓器や血管を守るため、過度の血圧上昇や血行不良は改善しておかなければなりません。

高血圧症に対して、現代医学では心臓・血管の神経や細胞に作用する薬や利尿薬及び昇圧物質阻害薬などを使い、直接血圧を降下させる治療を行います。

漢方では、体格や自覚症状に合わせた漢方薬を用い、体質や症状を改善し、結果的に血圧が下がることを図ります。

現代医学と漢方では考え方や作用のしかたが異なりますので、互いの利点をうまく活用したいものです。また、どちらにしても、食事や運動、睡眠、ストレスなどの点検・改善が大切です。

漢方薬による高血圧の治療

高血圧症の人によく用いられる漢方薬をご紹介します。高血圧症といっても、血圧の数値ではなく、患者の自覚症状や体質によって漢方薬が選択されます。不快な症状を取り除いたり、体のアンバランスを改善することが目標となります。汎用される漢方薬の一部を以下にご紹介します。

  • 冠元顆粒(かんげんかりゅう)
    高血圧傾向の方の頭痛・頭重・肩こり・めまい・動悸に有効。血行改善力の強い方剤。
  • 大柴胡湯(だいさいことう)
    がっしりとして、胸脇部の傷み・不快感や、腹部の膨満感があり、肥満傾向・便秘傾向の人の肩こり・頭重感に用いる。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
    大柴胡湯の適応に似て、さらに心悸亢進、息切れ、胸内苦悶感、神経症状などを伴う人に用いる。
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
    のぼせ、顔面紅潮、不眠などが強い場合に用いる。
  • 釣藤散(ちょうとうさん)
    のぼせる傾向の頭痛、めまい、目の充血、肩や背のこりに用いる。
  • 七物降下湯(しちもつこうかとう)
    身体虚弱な傾向の人の高血圧に伴うのぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重に用いる。
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)
    加齢に伴う足腰のだるさや、排尿障害、足の冷えなどがある人に用いる。
  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
    加齢に伴う足腰のだるさなどに加え、目のかすみ、ほてりなどがある人に用いる。