中西医結合という治療法

漢方の源である中国伝統医学を、中国では中医学あるいは単に中医と呼びます。中医学には数千年の歴史があり、それに対して中国における西洋医学の歴史は五百年ほどといわれています。西洋医学がより盛んになったのはせいぜい200年ほどですが、その発展はめざましく、それと同時に中医学の科学化や中医学と西洋医学の併用が発達してきたことは、自然な成り行きといえるかも知れません。この中医学と西洋医学の併用、すなわち一人の患者に対して両医学の面から治療を施すことを中西医結合と呼びます。それぞれの優れた点を結び合わせることにより、治療効果を高めることができます。

1900年代前半から中盤にかけて、毛沢東が両医学の結合を指示し、その分野の専門家の育成が組織化されてゆきます。1981年には中西医結合学会が誕生し、教育や研究、そして臨床おいて様々な成果が報告されていくことになります。例えば2003年に流行したSARSに対して、国の方針で中西医結合による治療を行い、WHOも優位性を認めています。

今般の新型コロナウイルス感染症においては、中国は他国に先んじて沈静化を見ましたが、実際に武漢で治療に当たられた中医学の医師を囲むWeb交流会が4月11日に開催され、私も参加しました。日中の中医学・漢方・鍼灸に携わる約700人もの専門家がインターネットでつながり、パネリスト達の貴重な意見に耳目を傾けました。

武漢には中国全土からおよそ4万人の医療従事者が集まり医療支援を担ったのですが、そのうちの約5千人が中医学の専門家だったとのことです。ほんの一割強ほどですが、治療においてはかなりの割合の患者に中医学が応用されています。基本的な診断や治療は西洋医学に基づきますが、決定的な治療薬が見いだせない中、中医学を施すことは中国においては自然な発想なのかも知れません。この中西医結合によって、西洋医学単独の患者と比較して重症化リスクの軽減、入院期間の短縮などの効果が見られています。

日本では中国医学・漢方を新型コロナウイルス感染症に応用するということはあまり報道されていませんが、一部の大学病院では試みられているとのことです。具体的に公表されるには、もう少し評価を待たなければなりませんが、治療効果を高める可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。

これまで日本においても漢方と西洋医学の併用は行われていますが、中国における中西医結合の実践規模には遠く及ばないように感じます。その要因に、上述の中国の体制のほか、生薬の種類が多いことや、生薬由来の注射剤といった豊富な投与法が挙げられます。日中の体質の違い、文化や習慣の違い、考え方や政治的な違いなども考慮する必要がありますが、より良い治療効果やQOLを求めていくために、情報交流を深めていく必要性を強く感じるこの頃です。