気持ちが不安定で感情の起伏をコントロール出来ないお子さんに対して、漢方薬が役立つことがあります。
子どもの場合、心身の発達途上ですから、不安定なのは当たり前とも言えます。個人差も考慮して、きめ細かい検討が必要と考えます。

抑肝散・甘麦大棗湯

すぐカーッとなって、泣きわめく子には、抑肝散(よくかんさん)や甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などが候補になります。抑肝散は頭痛を伴う場合にもよく使われます。親御さんもイライラしがちな場合は、親子で一緒に飲んでいただく場合もあります。

甘麦大棗湯は元々神経質な女性で、急に激しく泣き出してしまうような方に用いるといわれています。かなり甘い漢方薬です。江戸末期から明治にかけて活躍した名医で、有名な浅田飴の内容を考案したとされる浅田宗伯は、著書の『勿誤薬室方函口訣』で、「小児の啼泣、止まざるものに用いて速効あり」「夜泣きやおびえ、胸騒ぎは大抵この処方にて治する」などと述べています。

幼稚園などで、お友達にすぐ手を上げてしまうとか、周りの子どもたちと上手く溶け込めないといったお子さんが、抑肝散の服用で改善する例は、少なくありません。

桂枝加龍骨牡蛎湯

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)も小児の夜泣きに用いられます。またこの処方は、夜尿症や夢遊病のような状態にも用いられます。昭和-平成の名医、山田光胤は「子供でよく眠らないのに桂枝加龍骨牡蛎湯は効くんですね。・・・夜遊んでしまって眠らないという子供のノイローゼですが、それに桂枝加竜骨牡蛎湯をやって治ってしまった。・・・その子はすっかり丈夫になってカゼも引かなくなったのです」という言葉を残しています。

小建中湯・黄耆建中湯

心身の未熟な子どもたちに対しては、その成長を見守ることも大切です。その成長を助ける処方として小建中湯(しょうけんちゅうとう)や黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)が用いられます。小建中湯はもともと薬食同源的なスープ(湯)であったといわれる桂枝湯(けいしとう)に麦芽糖を溶かしたもので、甘く飲みやすい処方です。また小建中湯に、免疫力を高めるとされる黄耆(おうぎ)という生薬を加えたものが黄耆建中湯です。子どもの健やかな成長を促して、諸症状への自己治癒力を高めていくことも期待できます。

これらの他にも、状況によって様々な処方が選択される可能性があります。いずれにしましても、子どもの成長を念頭に、また飲みやすい工夫も考慮しながら対応していくことになります。