関節痛の漢方

原因不明の慢性腰痛

慢性腰痛

3ヶ月以上続く腰痛は慢性腰痛と判断されます。

腰痛を引き起こす疾患

腰痛を引き起こす代表的な病気には、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症などがあります。内臓の疾患により発生する場合もあります。

注意を要する腰痛も

腰痛の中には、危険な腰痛のタイプもあります。横になっても腰がうずく、痛み止めを使っても改善しないといった場合には「癌の転移」や「背骨の感染症」の可能性もあります。また、高齢者で布団から起き上がる際に背中や腰が痛むような場合には「骨粗鬆症」の疑いがあります。いずれの場合においても、専門医の診断が必要です。

原因不明の腰痛

上記の様に原因が特定される腰痛は、実は腰痛全体の20%にも満たず、80%以上の腰痛は原因不明といわれています。この原因不明の腰痛の正体は、腰にはなく脳にあるのではないかと考えられています。ストレスなどによる「こころ」の問題です。そのため「こころのケア」としてリフレッシュやリラックスを心がけたり、ストレッチや散歩などの運動を積極的に行うことが推奨されます。また場合によっては抗不安薬や抗うつ薬が利用されることもあります。

痛み方で見分ける問題箇所

腰に問題があると・・・
姿勢や動作と痛みとの関連性が強い。
痛くない姿勢がある。

脳(こころ)に問題があると・・・
姿勢や動作と痛みとの関連性が弱い。
家庭や職場などでストレスが多く、それらが痛みと関連する。
腰以外に体のあちこちが痛む。


漢方で考える原因不明の慢性腰痛

漢方には「腰は腎の府」「腎は腰をつかさどる」という言葉があります。腎はいわゆる「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」の一つです。五臓六腑は内臓の総称であり、その中の「肝・心・脾・肺・腎」という五臓が中心となって人体の生命活動は行われています。五臓にはそれぞれに役割があります。の役割は、精(生命力の根源)を蔵して生殖や発育をつかさどる、水をつかさどる(体液量や尿を調節)、吸気をつかさどる、骨をつかさどって随を生じて脳に通ずるなど。つまり西洋医学の腎臓の役割とは似て非なる概念であることがわかります。漢方においては腰の状態は腎の影響が強いとされています。

そのため腰痛の問題を考えるとき、腎を考慮するのですが、腎との関わりで発生する腰痛は加齢や過労による筋骨の衰弱が関係します。そのような関係性を示唆する体調が見られず、むしろ「こころ」の失調が顕著な場合は、情緒や思考と関連が深い「肝」「心」の状態を考慮します。は気の流れをつかさどるところで、現代医学でいう自律神経の働きに類似するといわれています。また筋肉の動きにも関わります。は血流をつかさどるところであり、また「こころ」の安定を生み出すところです。

以上のようなことを考慮し、心身の状態を判断して必要な生薬を検討します。

気の流れを改善して情緒を安定させるには、柴胡(さいこ)香附子(こうぶし)薄荷(はっか)といった生薬が用いられます。血の流れを改善するには川芎(せんきゅう)丹参(たんじん)といった生薬が用いられます。

イライラと気の高ぶりがある場合には、竜骨(りゅうこつ)牡蛎(ぼれい)といった生薬が用いられます。シクシクと気落ちが強い場合には、竜眼肉(りゅうがんにく)大棗(たいそう)といった生薬が用いられます。

神経や筋肉のこりや緊張をほぐすためには、芍薬(しゃくやく)葛根(かっこん)といった生薬が用いられます。

そのほか、胃腸の状態や暑がり・寒がり、月経の状態、年齢等々、様々な要素を考慮し、最終的に適した方剤を選択します。

 

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