症状別漢方紹介

寒い冬 漢方薬で冷え症対策《知って得する漢方4_’06.12》

冬になると冷え症のご相談が多くなります。最近では夏場でもクーラーや冷たい飲食物の影響で体が冷えてお困りの方がいらっしゃいますが,やはり冷え症がつらいのはこの冬場ですね。冷える部位で多いのは手足の先で,そのほか腰,お腹,全身などと続きます。
冷え症の原因は,単に環境的なものだけでなく,実は体内の代謝や循環,五臓六腑の失調などの表れであることが多いのです。こんな時には漢方薬が有効です。同じ冷え症であっても,人それぞれ体内の状況に合わせた選択が必要です。

多くみられる冷え症体質としては,①体力低下型,②神経質型,③血行不良型などが挙げられます。

①体力低下型

エネルギーの産生や貯蓄の力に乏しく,自分の体を温める力が衰えているタイプです。下半身あるいは全身的な冷えが生じます。日本人は比較的胃腸が弱く,このような体質の人が多いと言われています。このタイプに合わせて作られた方剤に参馬補腎丸があります。人参やイカリソウなど温養作用に優れる薬草の他,鹿茸(鹿の春角)や海馬(タツノオトシゴ)などの動物生薬を含みます。

②神経質型

神経質と冷え症が結びつくことが意外と思われるかもしれません。自律神経が緊張して末梢の血行が悪くなるために手足が非常に冷えるのです。そして同時に,怒りやすい・緊張しやすい・不眠などの症状を伴います。このような時には神経や筋肉の緊張をほぐす漢方薬を使います。代表的なものに逍遥丸があります。逍遙を国語辞書で調べると,「気ままにあちこちを歩き回ること。散歩」とあります。そんな気分にさせてくれるお薬というわけです。

③血行不良型

血行不良にも様々な状況があるのですが,冷え症やしもやけの原因になることが多いのは血虚受寒といわれる状態で,もともと血の不足あるいは機能低下があるところに寒冷刺激を受けて血行が滞ります。血の不足・機能低下があるので,肌につやがなかったり,月経が遅れやすい,貧血様の症状があるといったことを伴います。よく用いられる漢方薬は当帰四逆加呉茱萸生姜湯や温経湯です。血行を促進し,体を温めるとともに栄養状態をも改善してくれます。

※冷え症には①~③の複合型や,これら以外のタイプもありますので,実際のお薬の選択には専門家とよくご相談下さい。