症状別漢方紹介

肥満症の漢方薬《知って得する漢方28_’08.12》

食べ過ぎや運動不足となりがちな現代。そのような生活習慣に起因する病気やその予備軍が問題となっています。肥満はその要素の最たるものですから,食事や運動の見直しが重要です。「これを飲めばやせる」「あれを食べればやせる」といわれるものも様々ありました。効果が見られる場合もあると思いますが,ブームで終わるものがほとんどです。また,過激なダイエットによる健康被害や,リバウンドの問題などもよく耳にします。

バランスのよい食事と適度な運動でやせていくのが理想的です。そのように考えておられる方も少なくないとは思いますが,理想と現実はなかなか合致しません。そんな時に漢方薬で補っていくのも一つの手段です。ただやはり「これを飲めばやせる」と考え,漢方薬だけに頼ろうとすると,あまりいい結果は得られません。

漢方薬では「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」や「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」などで,適応症の一つとして肥満症が挙げられています。しかしこれらの処方も体質を考慮せずに使用しますと,効果がないばかりか,副作用の恐れが高まります。

漢方的な考え方

漢方では,人間の体は「気・血・水」の三要素から成るという考え方があり,これらのバランスを重視します。見た目にぜい肉がタップリあるのは体の中に「余分な水(漢方では痰飲(たんいん)と呼びます)」を抱え込んでいる状態です。また,舌にベットリと苔が厚くついている場合も体の奥の痰飲=隠れ肥満の恐れがあります。この痰飲を分解して体内から排出するためには,半夏(はんげ),陳皮(ちんぴ),茯苓(ぶくりょう),大黄(だいおう)などの生薬が体質に応じて選択されます。痰飲の原因として食べ過ぎや運動不足が考えられるのですが,そのほかにも気の不足(代謝力の低下や体温の低下),気の停滞(ストレスなどによる代謝障害),血行不良などにも配慮する必要があります。とくに食事制限をしていてもやせにくい方や,運動するとすぐに疲れてしまう方の場合,気の不足を補う薬草が必要です。代表的な薬草に黄耆(おうぎ)があります。このように体のバランスを整え,あるべき体質・体格を目指していくのが漢方的な考え方といえます。