症状別漢方紹介

気になる血の滞りをチェックしてみよう!《NaturalLife特集_’13.11》

冷えや肩こり,めまい,のぼせ,動悸など,比較的よくみられる症状ですが,これらの症状を自覚されている多くの方が,血行が悪いのではないかと気にされています。また初期の段階では自覚症状に乏しい生活習慣病も,血行の問題が非常に関わっています。
なぜのその血行不良が引き起こされるのか?原因は様々です。原因によって対処方法は異なります。どんな原因でどの様な血行不良が生じているのかを考える必要があるのです。
漢方では流れが悪くなったと考えられる血を瘀血(おけつ)と呼んでいます。「瘀血による三大症状として「しこる,痛む,黒ずむ」が挙げられますが,より具体的な症状を以下にご紹介しますので,まずチェックしてみましょう。

あなたの瘀血度チェック

①シミ、そばかすが多い 2点
②便が黒っぽい 2点
③顔や唇の色が暗い 3点
④よく肩こりや頭痛になる 3点
⑤慢性的な関節痛がある 3点
⑥おできや腫瘍など、体にしこりができやすい 3点
⑦動悸がする、不整脈がある 3点
⑧生理痛がひどい。経血にレバーのような血塊が混じる 5点
⑨皮膚の毛細血管が浮き出ている 5点
⑩下肢の静脈瘤が目立つ 5点
⑪舌は紫色に近い。黒いシミのような斑点があるか、舌下静脈が太い 7点

※各項目に添えられた点数が高いほど,瘀血の可能性が高いと言えます。また点数が低くても,症状の程度が強い場合には,瘀血以外の要素も強く関係している可能性がありますので,専門家にご相談下さい。

▽合計点数 アドバイス (おおよその目安にして下さい)
5~9点:瘀血の素因を持っていますが、注意していれば大丈夫。
まずは生活養生を心がけましょう。
10~19点:放っておくと瘀血の症状が進みます。
養生に励むと同時に専門的なご相談を受けましょう。
20点以上:まさに瘀血の体質といえます。
養生に励むと同時に専門的なご相談を受けましょう。

 

血行不良を改善するための養生には,体を動かすこと,体を温めること,ストレスをため込まないこと,食事のバランスを良くすることなどが挙げられます。食事のバランスについては,野菜類を多くし,砂糖類や油物を少なくすることが大切です。とくにパセリやセロリなど香りの強い野菜やタマネギや生姜など辛味のあるものを加えますとより効果的です。ただし刺激が強すぎると胃を痛めたりしますので,量の加減も考えましょう。塩分も摂りすぎますと血圧を高め,血管に負担をかけますので,お酢を利用するなどして,減塩の工夫をするのも良いと思います。

瘀血のタイプ分け 瘀血の詳しいタイプを知ろう

A
□疲れやすい □食が細い □カゼをひきやすい □汗をかきやすい

Aのチェックが多かった方は「元気不足」タイプ
血をめぐらせる力が不足していることによる血行不良です。
◎休息を取り元気の回復を図りましょう。
◎冷たいものを避け,穀類や温野菜中心の胃腸をいたわる食生活を。
漢方薬:補中益気湯(ホチュウエッキトウ),補陽還五湯(ホヨウカンゴトウ)など

B
□顔色が悪い □生理が遅れやすい □肌がかさつく □動悸がしやすい

Bのチェックが多かった方は「血の不足」タイプ
体の各組織に栄養を送り届ける血の量が不足して流れないタイプです。
◎胃腸を丈夫にして血の生成を促す必要があります。
◎無理なダイエットや夜更かしは禁物です。
◎鉄分の多いレバーや鶏肉,緑黄色野菜,黒豆,黒ごまなどを積極的に摂りましょう。
漢方薬:婦宝当帰膠(フホウトウキコウ),帰脾湯(キヒトウ)など

C
□体が冷えやすい □生理痛がひどい □夜中何度もトイレに行く □低体温

Cのチェックが多かった方は「冷え症」タイプ
冷えて血管が収縮したり,体を温める力の不足によって血が滞ります。
◎入浴や腹巻きなど体を温める習慣を取り入れましょう
◎ねぎ,しょうが,にんにく,ニラなど体を温める食材を活用しましょう。
◎夏野菜や南国の果物,冷たい飲食物は控えて下さい。
漢方薬:温経湯(ウンケイトウ),八味地黄丸(ハチミジオウガン)など

D
□のどが渇きやすい □肌が乾燥している □手足がほてる □寝汗をかく

Dのチェックが多かった方は「潤い不足」タイプ
体の機能亢進や加齢などによって組織の潤いが不足して血に熱がこもるタイプです。
◎香辛料や塩分,アルコールは控えましょう。
◎トマトやきゅうり,梨など,潤いの多い食べ物を摂りましょう。
漢方薬:生脈散(ショウミャクサン),八仙長寿丸(ハッセンチョウジュガン)など

E
□生理前,胸が張る □イライラしやすい □ため息が多い □胸やわき腹が痛む

Eのチェックが多かった方は「気の巡り失調」タイプ
自律神経やホルモンのバランスが崩れていたり,ストレスなどによって血管が緊張して流れにくくなっている状態です。
◎深呼吸や休息でリラックスを心がけましょう。
◎マッサージや運動でリフレッシュも効果的です。
◎三つ葉,春菊,セロリ,紫蘇などの香味野菜やハーブティーなどを活用しましょう。
漢方薬:冠元顆粒(カンゲンカリュウ),逍遥散(ショウヨウサン)など

F
□足がむくみやすい □頭が重い □太りやすい □吐き気が起こりやすい

Fのチェックが多かった方は「代謝失調」タイプ
体内に余分な水分や脂質がたまって血流を邪魔している状態です。
◎体を動かして代謝を促進しましょう。
◎食べ過ぎ,飲み過ぎに注意しましょう。
◎海藻,キノコ類,根菜類などを積極的に摂りましょう。
漢方薬:防已黄耆湯(ボウイオウギトウ),半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)など

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会