月経・妊活の漢方

更年期障害の漢方

古典にみる月経の経過

女性の月経について、漢方の古典では次のように考えられています。

月経は成長や生殖を支える腎精(じんせい)というエネルギーが月経に関わる経脈(けいみゃく:腎精や血液の通路)に満ちることで発生します。

腎精は7歳頃から蓄えられ、14歳で月経に関わる経脈に充満し妊娠できる体になります。その腎精は28歳でもっとも強壮な時期を迎え、その後は次第に衰えます。49歳になると月経に関わる経脈が空虚なものとなり月経が停止します。

更年期障害のしくみ

一般的に50歳を中心とした約10年間が女性の更年期とされ、卵巣の機能が衰え、それに伴って閉経を迎えます。この時期は体調をコントロールするホルモンのバランスも大きく変化し、またその影響が自律神経等にも及ぶため、心身に大きな負担となり、色々な症状が現れる恐れがあります。これが更年期障害で,症状の種類や程度,期間は人によって様々です。

代表的な症状

更年期障害でよく見られるのは、冷えのぼせ、発汗、動悸、頭痛、不眠、不安感・・・などです。これらの治療には、ホルモン剤や精神・神経系の薬剤、ビタミン剤などの西洋医学的な薬剤も使用されますが、比較的漢方薬の有効性が発揮されやすい領域でもあります。

更年期障害に頻用される漢方薬

上記の諸症状は、漢方では体を構成する「気・血・水」の過不足や循環不良などによる状態と考え、それぞれの状態にあった方剤を選択します。

  • 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん):不足する腎精を補い、のぼせを和らげ、骨や腰、耳、脳、目、泌尿器系を強くします。
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)、参馬補腎丸(じんばほじんがん):不足する腎精を補い、体を温めて冷えを緩和します。上方と同様に骨や泌尿器系を強くします。
  • 天王補心丹(てんのうほしんたん):気持ちを落ち着かせ、動悸や不眠を改善します。
  • 逍遙散(しょうようさん):精神的な不安感やイライラの強いときに使用。
    のぼせや不眠を伴う場合には,それらを取り除く生薬を加えた加味逍遙散(かみしょうようさん)が有効。
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血液循環を改善し、冷え・のぼせを緩和。下腹部の腫瘍にも用いられる。血行不良に汎用。
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう):血液循環と便通を改善し、下腹部のはりや痛み、のぼせなどを治療する。
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):血液と水分の停滞を改善し、腹痛を治療する。むくみやめまい、耳鳴りなどにも応用される。
  • 婦宝当帰膠(ふほうとうきこう):血液の栄養状態を改善し,体を温め,体力をつけるといわれる『当帰』が主成分。

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会