月経・妊活の漢方

更年期と手指の痛みとの関係《NaturalLife114_’20.10》

手の指に痛みやしびれ、さらには関節の変形などの症状が現れる病気があります。とくに女性に多く、更年期を過ぎると増加する傾向があります。こういった症状は関節リウマチや脳の疾患などの場合もあるため、気になる場合には医師の診察を受けることが必要です。

女性は50歳頃に更年期を迎え、女性ホルモンが大きく減少します。体の大きな変化として閉経があり、その際にのぼせやホットフラッシュ、倦怠感、めまい、精神的不安といった症状が発生することが多く、これがいわゆる更年期障害です。

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは月経などの生殖機能に影響するだけでなく、脳の機能や脂質代謝、骨や皮膚の代謝などにも関わっているため、閉経後に骨粗鬆症や脂質代謝異常症など、さまざまな失調が現われる可能性があることも知られています。

手指の痛みやしびれ、関節の変形は、前述の関節リウマチや脳の疾患などとの関連がない場合、以前は手の使いすぎによるものと考えられていました。しかし現在はエストロゲンの減少が原因の一つとして認識されています。エストロゲンの分泌減少により、手指の関節や関節を包む膜、指を動かす腱、腱を包む腱鞘などが弱くなり、炎症が起こると、痛みやしびれ、こわばりなどを発症するのです。

これらの症状に関連する疾患にとして、指の第1関節が炎症を起こして変形するヘバーデン結節、第2関節が変形するブシャール結節、腱や腱鞘が腫れて指が動かしにくいバネ指、手首の母指側が痛んで腫れるドケルバン病、手のひらの付け根で神経が圧迫されることで手指の痛みやしびれを来す手根管症候群、親指の軟骨がすり減って痛む母指CM関節症などがあります。

対症療法として痛みや炎症を抑える薬物療法があります。さらに手指の固定、あるいはストレッチなどが施されます。状態が悪い場合には手術が必要な場合もあります。また女性ホルモンの類似物質の補充として、大豆由来の食品の摂取が奨励されています。

漢方薬もしばしば利用されます。一般的な関節痛の治療に用いられる疎経活血湯(そけいかっけつとう)や当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などが、手指の痛みやしびれにも有効であるという報告があります。また体の衰えを緩和したり、血流を改善する漢方薬を体質に合わせて選択して利用すると、症状の緩和や予防に役立ちます。悪化すると日常生活にも大きな影響を及ぼしますので、早めの対応が大切です。

写真:トウキ(セリ科) 秋に根を収穫し、生薬の当帰とする。当帰は更年期障害の治療にも、関節痛の治療にも多用される。

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会