症状別漢方紹介

安中散 あんちゅうさん

桂皮(けいひ)、延胡索(えんごさく)、茴香(ういきょう)、縮砂(しゅくしゃ)、良姜(りょうきょう)といった体を温める生薬が豊富に含まれます。また、桂皮、茴香、縮砂は芳香に富んだ生薬で、気の流れを整える作用があります。胃腸を温めて、気の流れを整えることで、冷えやストレスによる疼痛を緩和させることが期待できます。延胡索は止痛の作用が有名な生薬です。原典では縮砂ではなく乾姜が使われています。ちなみに乾姜は日中で少々差異があります。ショウガを乾燥させたものを中国では乾姜と呼び、ショウガを一度蒸して乾燥させたものを日本では乾姜と呼びます。ショウガはショウガ科ショウガ属の植物ですが、良姜はショウガ科ハナミョウガ属の植物です。ミョウガはショウガ科ショウガ属の植物です。

 

参考書

 

新 一般用漢方処方の手引き((株)じほう;平成25年9月26日)

成分・分量 桂皮3~5 延胡索3~4 牡蛎3~4 茴香1.5~2 縮砂1~2 甘草1~2 良姜0.5~1
効能・効果 体力中等度以下で、腹力は力がなくて、胃痛又は腹痛があって、ときに胸焼けや、ゲップ、胃もたれ、食欲不振、はきけ、嘔吐などを伴うものの次の諸症:神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱

※本書は日本の漢方製剤(医療用・一般用・薬局製剤を含む)の基準となる一般用漢方処方をまとめたものです。本書収載の漢方処方は日本国内で漢方製剤として認可を得ることができます。本書の選から漏れた漢方処方であっても、生薬製剤などのカテゴリーで製剤化されているものがあります。

【原典】太平恵民和剤局方
(陳承、裴宗元、陳師文ら;1107~1110年)

慢性急性の脾疼痛、翻胃(嘔吐)、酸水を吐く、寒邪の滞留、停積不消、胸膈脹満、攻刺腹脇、悪心嘔逆、面黄肌痩、四肢倦怠を治す。又婦人の血気刺痛、小腹連腰(下腹から腰にかけての)攻注重痛も治すことができる。
元胡索(去皮)良姜(炒)乾姜(炮)茴香(炒)肉桂 各五両 牡蛎(煅)四両 甘草(炒)十両
上を細末と為す。毎服二銭、熱酒で服用する。婦人は薄い酢湯で服用する。酒を飲まないものは塩湯で服用する。時間はこだわらない。

方輿輗(有持桂里;1853年)

婦人、血気刺痛、小腹より腰に連なり、攻疰重痛(突っ張って痛むこと)するを治す

勿誤薬室方函口訣(浅田宗伯;1879年)

此方世上には癖嚢(胃下垂、胃アトニー、胃拡張)の主薬とすれども、吐水甚だしき者には効なし。痛み甚だしき者を主とす。反胃(食後腹が充満し嘔吐を伴う胃の病気)に用ゆるにも腹痛を目的とすべし。又婦人血気刺痛には癖嚢より反って効あり