生活習慣病の漢方
癌について
癌に対しては,癌そのもの・発癌因子・体質の変化・精神面など,様々な面から状況を考慮して対応する必要があると思われます。
発癌因子として以下の様なものが考えられます。
紫外線 喫煙 大気汚染
睡眠不足 過度の飲酒 食品添加物 欧米化した食生活
ストレス 社会を覆う不安 など
自己防衛システム(癌抑制遺伝子やDNA修復遺伝子など)により,多くは大事に至らないのですが,長期間にさまざまな発癌因子の影響を受けて遺伝子変異が起こると,細胞に狂いが生じて,無秩序な異常増殖を繰り返して腫瘍となります。
そして周辺の組織ないし全身への浸潤,転移と進行していきます。癌の発生した組織や臓器はもとの機能を失い,患者の体力は消耗してゆきます。
漢方での治療
漢方での癌病態への対応は大きく2つに分けられます。
1.自身の体力・免疫力(正気)を見る
正気不足(心身機能・成分の低下) ← 扶正(正気を強める)
・気虚(気力・免疫力の低下)← 補気
・血虚(血の栄養不足,機能低下)← 補血
・陰虚(体の潤い不足,栄養不足)← 補陰
・陽虚(気力が衰え,体を温める力が不足)← 補陽
2.体内の停滞・余剰(実邪)を見る
実邪(体内の有害物質) ← 去邪(体に有害な物を取り除く)
・気滞(気の滞り) ← 理気
・瘀血(血の滞り) ← 活血化瘀
・痰湿(水の滞り) ← 化痰利湿
・毒熱(邪の熱化・毒) ← 清熱解毒
さらに体のどの部分に不足があるのか,または実邪が存在するのかを考慮します。
中医学では,体の部位を示す物に,五臓六腑,表・裏,上焦・中焦・下焦などの概念があります。
これらの考え方に基づいて,一人一人の状況に適した漢方処方、民間薬、食品を検討します。
国立がんセンターの提唱する癌予防12カ条
・バランスのとれた栄養をとる
・毎日,変化のある食生活を心がける
・食べ過ぎを避け,脂肪は控えめに
・お酒はほどほどに飲む
・たばこはすわない
・食べ物から適量のビタミンと繊維質をとる
・塩辛いものは少なめに,熱いものは冷まして
・こげた部分は避ける
・かびの生えたものに注意する
・日光に当たりすぎない
・適度にスポーツする
・からだを清潔に保つ
そのほか,精神面の異常(ストレスなど)が過ぎたり長引くと,全身の気血の循環および代謝の乱れ,あるいは滞りを引き起こし,癌の発生,発展につながりやすくなります。病の発生・悪化を予防するには,五臓六腑のバランスを保つことが大切ですが,情志もそのバランスに大きな影響を与えるのです。
時には怒り,時には悩む。それは人間のあるがままの姿です。それが慢性化しそうなとき,食事や運動などによるリフレッシュや,あるいは漢方薬で感情の調整をしてあげることが肝要になります。
※実際に漢方薬を使用する際は、詳しい相談の上,服用下さい。