症状別漢方紹介

冷えと免疫力

今年を振り返ると、何と言っても新型コロナウイルスに振り回されました。様々なことに制限が伴い、閉塞感を感じずにはいられません。この生活はいつまで続くのでしょう?

ワクチンの実用化や治療薬の開発も待たれるところですが、個人個人の自衛の大切さが叫ばれ続けています。皆様ご存じの通り、手洗い、マスク、うがい、そして三密を避けるといったことです。今年はインフルエンザウイルスの感染者が極端に少ないそうで、個々人の自衛努力がその一因として大きいと言われています。

また体力・免疫力を高めることが、予防としても、あるいは万一感染した場合に重症化を避けるためにも重要と言われます。とくに冬場は冷えと乾燥を防ぐことも免疫力を維持していく上で大切です。

本稿の3月号では黄耆(おうぎ)という生薬を紹介しました。漢方では体に備わる防衛の力を衛気(えき)と呼び、衛気を強めることが感染症や花粉症の予防に役立ちます。黄耆はその衛気を補うことに優れています。黄耆を含む処方には玉屏風散(ぎょくへいふうさん)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがあります。補中益気湯には有名な薬用人参も含まれます。薬用人参は痩せて冷えやすい人に向く薬草で、体がほてったり、高血圧の人は注意が必要です。

さらに体を温めるには桂皮(けいひ、シナモンの一種)、生姜(しょうきょう、ショウガを乾燥させたもの)、呉茱萸(ごしゅゆ、ミカン科の一種で苦みが強い)といった薬草や、鹿の角、タツノオトシゴといった動物生薬を用います。また乾燥を防ぐためには当帰(とうき、セリ科の一種で血液を補う)や麦門冬(ばくもんどう、ジャノヒゲの塊根でのどや口を潤す)などが有効です。

処方としては、黄耆、桂皮、生姜を含む黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)や、黄耆、人参、当帰、桂皮を用いる十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)などがあります。冷えによる血行障害で、痛みやしもやけまで生じる人には、当帰、桂皮、呉茱萸、生姜などを含む当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)や温経湯(うんけいとう)が役立ちます。温経湯は人参や麦門冬も含んでいます。また強力な動物生薬を含むものとして、鹿の角を含む参茸補血丸(さんじょうほけつがん)やタツノオトシゴを含む参馬補腎丸(じんばほじんがん)などが使用されます。

どんなに良いものをとっていても、一方で体に悪い習慣があると、期待通りの効果は望めません。免疫力を下げると言われることに、ストレス、睡眠不足、飲食の乱れ、運動不足、過労などがあります。もちろん避けられないこともあるかとは思いますが、自分に何が過剰で、何が不足なのかを認識しながら、できる範囲で改善に取り組みたいものです。

写真:呉茱萸(ごしゅゆ)強い苦みと香りが特徴的