症状別漢方紹介

二日間の花粉症体験《NaturalLife19_’12.3》

17年前の4月初め,私は薬剤師国家試験に挑んでいました。受験会場は3月に卒業したばかりの薬科大学だったのですが,すでに住居は引っ越しておりましたので,知人宅に泊めさせてもらい,二日間の試験に臨みました。

試験開始早々,突然水様の鼻水が出だします。すすってもすすっても止まりません。それでも試験中ティッシュやハンカチを取り出したりしたら,不正行為と勘違いされるのではないかと思い,しきりにすすり続けるしかありませんでした。休憩時間に私を見た友人からはついに花粉症が始まったことを宣告され,自身もそれを受け入れるしかないと思ったのでした。

寒けや頭痛,熱感などの症状はなく,とにかく水っぽい鼻水が止まらない状態です。このような時,漢方薬なら小青竜湯が効果的です。水様の鼻水は体が冷えているときに出やすく,逆に粘性が高く,黄色っぽい鼻汁は熱を伴うことが多く,より消炎に働く生薬を選択します。小青竜湯は,体を温めて呼吸器系にたまった水様の痰や鼻水を処理する力があります。寒けや咳を伴う感冒の時にも効力を発揮しますが,花粉症の治療において最もよく使用される処方です。服薬によって眠くなることもありませんから,受験の時には好都合です。

しかし残念ながら当時このような知識がなかった私は,解答用紙を汚さぬよう必死に鼻をすすりながら,どうにか二日間を乗り切りました。

不思議なことに症状はこの二日間だけでピタッと止まり,現在に至るまで発症していません。よりによって大事な試験の時に発症するなんてと思い出す度に感じるのですが,むしろそのような時だからこそ発症したのかもしれません。

花粉症は,花粉の成分に対して体の免疫システムが過敏に反応するアレルギー性疾患です。発症の引き金を引くのは花粉ですが,本当の問題は花粉ではなく,アレルギー体質という身体側にあります。アレルギー体質形成の原因には生活習慣や食習慣の乱れ,大気汚染など様々な事がいわれています。さらに精神的にも大きなストレスや長期的なストレスが加わると,免疫システムに影響があることが知られています。

私の場合にも引っ越しや移動,そして試験などが重なり,疲労とストレスで体が悲鳴を上げていたのかもしれません。