免疫系の漢方
免疫力を高めよう!《NaturalLife107_’20.3》
今年はカゼやインフルエンザだけでなく、中国武漢で発生した新型コロナウイルスが猛威を振るっています。いずれも感染予防には手洗いやうがい、マスクの使用が重要とされ、万一感染・発症した場合には適切な治療を受ける必要があります。また予防効果を高め、たとえ感染しても発症の程度をより軽度に抑えるには、体力や免疫力を高めることが有効とされています。
「疫を免れる力」と書く免疫力ですが、そもそも「疫」とは悪性度の強い伝染病に使われる言葉で、中国医学の古典に度々登場し、人々がそういった病と太古の昔から闘ってきたことがうかがえます。
現在、免疫力といえば感染症だけでなく、アレルギー疾患やがんなど、様々な病気に関わる要素として認識されています。私たちの体を様々な病気から守るために体に備わる仕組みが免疫です。その仕組みは多様な免疫細胞や抗体などの物質が複雑に関係しており、体内に侵入した異物や、体内で発生した異常細胞などを排除してくれています。この防衛システムの力が免疫力ですが、単に強ければいいのかというと、そうではありません。免疫の過剰反応がおこると、アレルギー疾患や自己免疫疾患などが引き起こされます。つまりは免疫という仕組みも、バランス良く機能することが大切であり、そのような状態を維持することが免疫力を高めるということなるでしょう。
免疫のバランスは自律神経やホルモンのバランスとも密接な関係があります。ですから睡眠不足やストレスといった自律神経に悪影響をもたらすことは免疫にとっても良くないことになります。また免疫の機能にとって必要とされる栄養素は多種に及びます。一つのものに固執するよりも、旬の素材を中心に、野菜も肉・魚類も、穀類もかたよりなく取っていただくのがよいでしょう。
漢方では体に備わる防衛の力を衛気(えき)と呼び、衛気を強めることで感染症や花粉症を予防する知恵があります。とくに黄耆(おうぎ)という生薬には衛気を強める働きがあるとされ、黄耆を含む玉屏風散(ぎょくへいふうさん)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが多用されます。さらに、個々人で異なる体調や体質を考慮し、バランスの良い処方を選択することが免疫力の向上に役立ちます。
憂いを払拭するのは難しいですが、できるだけの備えをしたいものです。
写真:黄耆(マメ科キバナオウギの根を乾燥したもの)
執筆者情報

研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
(中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武) - 「風薬治血」-風薬による血病治療
(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
(中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌) - 補陽還五湯の応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華) - 黄耆の運用経験
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春) - 黄耆の医案3例
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌) - 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸) - 応用範囲の広い温胆湯
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南) - 温胆湯の症例報告
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
