消化器・口の漢方
消化促進の漢方薬《知って得する漢方33_’09.5》
蛇含草(じゃがんそう)
落語で「蛇含草」という名の草が出てくる話があります。蛇含草は山奥に住む大蛇が使う消化薬になるといいます。
大蛇はふだん,猿やウサギを餌食にしているのですが,時に山中で人間に出くわすと,一飲みにしてしまうこともあるそうで,さすがの大蛇も人間ほどの大きなものを飲み込んでしまうと,腹がはり大変に苦しむ。そのような時大蛇は谷間に降り,蛇含草をなめ,苦しみから逃れるとのこと。話にはさらに見栄っ張りの大食らいが登場します。大阪落語では餅好きの男,江戸落語ではそば好きの男となっています。どちらも度を超して好物を大食し,あらかじめ手に入れていた蛇含草を使って食べたものを消化させようとしたところ,蛇含草はもともと人間を消化してしまう草であったため,周囲の人が気がつくと,当人の体は消え,食べ物が着物を着ていたというオチです。
さて,蛇含草という名の薬草は中国の薬物書に記載があります。しかしこちらの蛇含草は消化を促すのではなく,蛇や虫にかまれたときの消炎や解毒などに用いられます。
焦三仙(しょうさんせん)
漢方で実際に消化を促進させる目的で用いられるものに,山楂子(さんざし),麦芽(ばくが),神麹(しんきく)といった生薬があります。山楂子は中国で酸味のある果物としても常食され,肉類の消化に役立ちます。さらに最近では血中の脂質を下げる作用があることでも注目されています。麦芽は大麦を発芽させたもみを乾燥させたものです。穀類の消化に役立ち,胃腸を丈夫にするとされています。神麹は小麦ふすま(米でいうぬかの部分)や小麦粉,小豆,杏仁などを合わせて発酵させたものです。穀類,野菜,酒類などの消化を促進させるといわれています。山楂子・麦芽・神麹の3つをそれぞれ表面を薄く焦がす程度に炒めて配合すると焦三仙と呼ばれる処方になります。中国医学では素晴らしい効果を持つものに「仙」の字を用います。病気の災いから人を救うという思いが込められています。
これら消化を促進する生薬は,治療の主役になることは少ないのですが,胃腸虚弱や食欲不振を改善する処方にしばしば配合されます。
また中国では祝いの行事などで大食する機会に,焦三仙の粉末を蜜で丸めた大山楂丸(だいさんざがん)が大変に活躍します。

左から山楂子,麦芽,神麹
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研究報告・講演等
翻訳
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(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
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(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
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(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
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(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
