症状別漢方紹介

掌蹠膿庖症の漢方薬

掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう)は手のひらや足の裏に白く小さな膿疱(膿をもった水疱)がみられる病気です。膿疱の周囲は紅斑となり、かゆみを伴うことがあります。増悪と寛解を繰り返して慢性的に経過します。中年の女性によくみられ、男性に比べると2~3倍ほど高く発症するといわれています。膿疱自体は無菌性であり、他人に移ることはありません。

【原因】詳細な原因は不明ですが、次のようなものが増悪因子として考えられています。
喫煙、金属アレルギー、扁桃腺炎、虫歯、歯周病、ストレス、薬剤、細菌アレルギーなど。

【西洋医学的な治療】外用薬(ステロイド軟膏やビタミンD3軟膏)や紫外線療法などが行われ、また内服薬として抗生物質、ビタミン剤などのほか、皮膚角化症改善剤や免疫抑制剤などが用いられることもあります。
喫煙や扁桃腺炎、虫歯などと関連性があることから、禁煙や扁桃摘出術、虫歯の治療などで掌蹠膿疱症が改善することもあります。

【漢方的な考え方】

膿が生じている状態は、患部で熱気と湿気が発生していると考えます。皮膚の赤みやかゆみも熱が原因です。対症療法的に、熱と湿を取り除く漢方薬として黄連解毒湯(おうれんげどくとう)があります。黄連解毒湯の加減方である温清飲、荊芥連翹湯なども選択肢となります。また黄柏(おうばく)、蒼朮(そうじゅつ)、茵陳蒿(いんちんこう)といった生薬も湿と熱を取り除くために応用されます。

手掌や足底が強く火照る症状の緩和に用いられる三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)も掌蹠膿庖症の改善に多用されます。

汗が多くなる夏に悪化する場合には、利水止汗作用のある防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)が応用されることがあります。

そのほか、血行不良や精神的ストレス過多などを考慮する場合もあります。

また根本的に免疫改善をはかる必要があると考えられます。免疫の乱れは生活習慣によることが多いため、食事や睡眠時間などを見直すことも重要です。漢方薬では消化器系、呼吸器系、根本的な体力などの状態に過不足がないかを検討し、過不足の是正を図るものを選択して治療します。

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会