症状別漢方紹介

アトピー性皮膚炎

1.年齢による分類

①乳幼児
顔や頭の急性湿疹が多く見られます。漢方的原因は湿・熱・風の邪気,そして胃腸未熟の脾虚です。湿・熱を取り除き,脾虚を補うことで,体力・免疫力を高めることを考慮します。

②児童
ひじやひざの内側の湿疹,カサカサ,紅班,かゆみなどが多くなります。漢方的には湿・熱・風に,さらに燥の邪気が加わります。体が未熟であること,食習慣や精神面なども考慮します。

③成人
大人になってから発症する場合や,子どもの時一端治まっていたのが再燃する場合があります。全身的な紅斑性の乾燥型が多く見られます。精神的ストレスが重大要素である場合もあります。生活習慣も考慮します。

2.症状による分類

①湿疹・ジュクジュク
漢方的原因は湿・熱・風の邪気や,肺・脾・腎などの臓腑の機能低下が多く見られます。消炎とジュクジュク(体内の余計な水分)を取り去る対症的な療法と,体内の水分代謝を改善するために肺・脾・腎の各臓を中心とする体質改善を図ります。化膿が見られれば,解毒(抗菌・抗ウイルス)作用のある薬草を用います。

②乾燥・カサカサ・紅班
漢方的な原因は熱・燥・風・湿などの邪気と,肝・心・脾・肺・腎などの臓腑の機能異常が多くみられます。皮膚の潤いを補うこと,亢進して熱感を持った血行を冷ますことを主体に治療を行います。紅班や痒みの程度により,薬草を使い分けます。口渇やイライラ,便秘を伴う場合は,それらを考慮した生薬を加えます。

3.漢方薬の運用

症状を軽減させるもの,体質を改善させるもの,皮膚以外の症状を考慮したものなどを適宜組み合わせ,そのバランスと,症状の経緯を観察しながら治療を進める必要があります。
漢方薬の使用方法は,エキス剤の内服,煎じ薬の内服のほか,薬草の煎じ液を入浴剤として用いたり,患部に塗布する方法があります。

4.スキンケア

スキンケアは,内服と同様に重要なことです。以下のようなものを適宜,使い分けたり,合わせて用いたりします。
漢方の軟膏剤は,それぞれの薬効がありますが,独特の香りや色があり,やや使いにくい面があります。
クリームは,カサカサ肌に水分と油分を補うことができます。クリームやローションは,肌の構造についての科学的な研究をもとに,不足している水分・油分を補うのに有利なように作られています。ですから大いに利用したいところです。

①薬草の入浴剤など
目的に併せた薬草・ハーブを用います。

②漢方軟膏
中黄膏:消炎・解毒にすぐれる。
紫雲膏:消炎・潤肌にすぐれる。
太乙膏:消炎・解毒・収斂潤肌にすぐれる。

③クリーム
瑞花露クリーム:保湿にすぐれ,若干の消炎成分を含む。
ノンEクリーム:肌になじむクリームにグリチルリチンを配合。

④ローション
瑞花露ローション:薬草の苦参(くじん)を含有。消炎・保湿を期待。
ノンEローション:やさしく潤いと清涼感を肌に与えてくれます。

⑤その他
リスブランナチュラルスキンオイル:人の皮脂に近いオレンジラフィーオイルで乾燥が気になる肌を健やかに整えます。
馬油:馬の皮脂も人間の皮脂に非常に似ているため,保湿油として利用。

5.ライフスタイル

アトピー性皮膚炎をはじめ,アレルギー性疾患では,現代の食生活がしばしばクローズアップされます。実際に症状と食の因果が明確な場合は,除去食などが行われることがありますが,必ずしも明確であるとはいえません。しかしながら,食習慣の乱れが,様々な形で私たちの体をむしばんでいるのではないかと思われる事象が,昨今増えていることも事実です。たとえ食習慣が直接的な原因であろうとなかろうと,今見直す必要は大いにあるのではないでしょうか。
精神的状況も,炎症の程度に大きく影響します。ストレスなどでイライラすると,痒みが増します。
睡眠不足では,直接的にも,あるいは精神状態などに作用して間接的にも影響します。
日々の生活の中で,毎日万全の状態であり続けることは,困難なことかもしれません。ストレスのない社会もありません。どこかに無理が生じてしまう健康法も疑問です。
しかしながら,生活を見直すことで苦しい症状が改善するのであれば,できることからやってみるのが重要と考えます。
特に,食事,睡眠,気分転換などが重要と思われます。“できることから”です。
※実際に漢方薬を使用する際は、詳しい相談の上,服用下さい。