症状別漢方紹介

肩のこりと痛みの漢方

肩こりに悩んでいらっしゃる方は大変多くみられます。職業柄、目を酷使する方とか、根を詰めて作業する方などには高頻度です。体質的には、高脂血症や高血圧、便秘、更年期障害などの状態の方が多いように思われます。また、精神的なストレスや寒冷の気候などとの関わりも深いようです。

肩や首の筋肉は重い頭を支え、たえず使用されるため疲労しやすく、血流が悪くなると疲労物質がたまり、筋肉が硬直してこりとなります。このような場合には、疲れた筋肉を休め、こりをほぐす体操をしたり、入浴やマッサージで血行をよくしてやると、こりが和らいできます。ところが他に原因となる疾患があり、その反射として起こってくる肩こりの場合、肩をもんだりマッサージをしてもなかなか楽にはならず、原因となる病気の治療が肝腎です。

肩の痛みということでは、いわゆる四十肩、五十肩が思い浮かびまが、その他、外傷によるものや内臓疾患の関連痛などがあります。
肩関節は、腕を様々に動かしたり、ひねったりできるように複雑な構造をしています。加齢とともに肩にある腕を支える筋肉が衰えてくると、何らかの摩擦で炎症が起こりやすくなり、そうすると腕や肩を動かすたびに痛みが生じ、動かす範囲も制限されるようになります。

五十肩の急性期は痛みが主体となり、とくに夜間痛が特徴的で、夜眠れないこともあります。無理に動かしたり運動したりすると症状が悪化するので、安静が第一です。肩を冷やすと痛みが強くなるので、寝る前に入浴し、保温をすると効果的です。慢性期には、痛みは和らぎ運動障害が主体となります。日常の動作に支障をきたすこともありますが、関節の動く範囲を広げるために運動が必要です。振り子運動が有効といわれています。しかし、くれぐれも無理をせずに行うことが重要です。

肩のこり・痛みに対する代表的な漢方処方

体の血行をよくして、神経や筋肉の緊張をほぐす作用のある処方です。

  • 冠元顆粒(かんげんかりゅう)
    中年以降または高血圧傾向のあるものの,頭痛,頭重,肩こり,めまい,動悸に用いる。血行改善力に優れる。
  • 葛根湯(かっこんとう)
    首から背にかけてのこりや痛みによく用いられる。体力があり、筋肉のこわばりが強い場合に適する。
  • 桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)
    やや虚弱な人の肩こりで、こわばりが少ない場合。
  • 大柴胡湯(だいさいことう)
    がっしりとした人の頑固な肩こりに用いられる。胸脇部のこわばりや不快感も見られることがある。肥満傾向・便秘傾向の人が多い。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
    大柴胡湯の適応に似て、さらに心悸亢進、息切れ、胸内苦悶感、神経症状などを伴う人に用いる。
  • 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
    虚弱なタイプで血色が悪く、筋肉の緊張も弱い場合。便秘はなく、冷え症で、神経質な人が多い。
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
    神経質な人で、時に便秘や冷えが見られる場合。月経困難症や更年期障害の女性に多用される。
  • 血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)
    血行不良による、肩こり、頭痛、のぼせ、動悸などに用いられる。

※これらの処方を体質に応じて使い分けます。またこの他、五十肩では水毒を改善する処方がよく使われます。

※実際に漢方薬を使用する際は、詳しい相談の上,服用下さい。