症状別漢方紹介

あがり性・緊張しやすい

人前で話すとき,1対1で話すとき,電話で話すとき,留守番電話にメッセージを残すとき・・・。誰でも緊張する場面はもちろん,普通に考えれば緊張しなくてもいいようなときに緊張してしまう方がいます。

心臓はドキドキ,手には汗,口は渇き,手は震えも,そして声も震えてとぎれとぎれになってしまいます。
意識的に息継ぎを多くしたり,呼吸をゆっくりしたりするといくらかいいようですが,長時間続くと非常につらいものですよね。

国語の授業中,指名されて立ち上がり,一人で教科書を音読しなくてはならなくなったとき,これも恐怖です。誰かが咳払いをしてくれたり,机がガタッとなったりと,何か物音がすると自分の声のふるえがごまかせるんじゃないかと思ったりします。

また,他の人がこのような状況のとき,とても他人事とは思えず,自分もドキドキしてくることもあります。
さらに,日付が自分の出席番号と重なる日は登校するのがおっくうで,仮病を使ってしまうことも。

それでも人前で話さなくてはならない状況が度重なると,呼吸の仕方,間の取り方がいくらか上手になることもあります。

毎度のこととなると,周囲の人も知っていますが,それで気が楽になる場合と,却っていやな場合があります。

励ましてくれる人もいます。
「落ち着いて! 落ち着けば大丈夫!」「手のひらに人という字を・・・」
残念ながら,励みにならないですね。落ち着こうと思っても落ち着けないから困るんですよね。

ところが,「落ち着けばいいんだ!」と思って落ち着けるように変化する事があります。その方法を以下にご紹介したいと思います。

まず,中国医学的なお話しです。


外部の状況により緊張してくるのは,気の流れの異常です。五臓でいうと気の流れを調節する“肝”の問題です。肝の興奮が心に伝わればドキドキしてきます。そしてカッーと熱くなるのは気流の異常により火がついた状態です。

体質的には,神経や筋肉が緊張しやすいあるいは引きつりやすい人に多く見られます。俗に言う神経質な方の一部に入ると思われます。

このようなときには,神経や筋肉の緊張をほぐしてくれるお薬を使います。生薬としては,芍薬(しゃくやく)や柴胡(さいこ),釣藤鈎(ちょうとうこう),厚朴(こうぼく)などが有効です。方剤としては,抑肝散や加味逍遥散などがあります。その他,体質によって考慮します。


このような漢方薬は,緊張が予測される事前に服用する場合もありますが,平素から体調を考慮して服用していた方が有効です。しかし,薬だけで全て解決する問題ではないように思われます。そこで次を参考にしていただきたく思います。

漢方薬以外の方法にも,さまざまな訓練法が知られています。心を落ち着かせる訓練です。

呼吸法や自律神経訓練法などもありますが,私の知っている範囲では,瞑想が有効です。が,瞑想にも様々な方法があります。
気功,太極拳,ヨガ,坐禅・・・などで行われます。それぞれにまた様々な流派があります。

そういったもので,しばしば耳にするのが,腹式呼吸やお臍の下にある丹田に気を集中させるといったことです。

下腹部に気を集中させると,上半身の緊張がほぐれて落ち着いてきます。そして何も考えない訓練をします。
目は閉じる流派,閉じない流派(ただし何かに注目してはいけません)様々です。

私の体験したとある気功教室では,週1回2時間の練習を約3か月で1サイクルとしていますが,この約3か月でかなり心持ちに変化があります(もちろん家でも個人練習をします)。内容は上の瞑想と軽い動きを取り入れます。

下腹部に気を集中させて,上半身の緊張をほぐすことを会得したら,イライラしたり,緊張する度に,それを実践してみるのです。よく緊張するときに深呼吸をしますが,それと合わせて行うとずっと効果的です。深呼吸だけでは緊張がとれません。とくにあがり症の方は。

普段,ちょっと肩に力が入ってしまっている時にも,この上半身の力を抜くことをやってみると,いかに力んでいたかがわかります。

その他にも,様々な方法があることと思います。あきらめず,前向きに考えていただきたいと思います。
性格だからと考えてあきらめないでください。性格も関連はありますが,問題は体調と意識です。
ある日突然あがり性になることがあったり,普段あがり性なのに,ある時だけうまく発表ができたりすることもあるのですから。

※実際に漢方薬を使用する際は、詳しい相談の上,服用下さい。