泌尿器系の漢方
寒い季節の漏れ対策《NaturalLife116_’21.2》
寒い中にいると鼻水が出てきたり、尿が近くなるなど、分泌や排泄が多くなることがあります。汗は逆に少なくなりますが、女性ではおりものが多くなる方もおられます。寒さによって増える分泌物は、色は無色で、匂いが薄く、質はさらさらと水っぽい傾向があります。
逆に発熱や炎症に伴う分泌物は、色は黄色味を帯び、匂いはきつくなり、粘りが出てくる傾向があります。その場合には、まずその炎症を鎮めて解決を図ります。
冷えによる場合には、体を温めることが基本ですが、慢性的に水様の分泌物がある場合には、根本的な冷え性の体質や体力の低下が関係している恐れがあります。
根本的な体力を維持するには、漢方ではとくに胃腸と腎臓を重視します。胃腸は飲食物を消化して栄養を吸収するところであり、腎臓は生命力の源を貯蔵するところと考えるからです。体を温める力や病気の原因となる邪気から身を守る免疫力も、やはり胃腸と腎臓の力が大切とされています。
水っぽい鼻水は、鼻カゼやアレルギー性鼻炎などで見られますが、慢性的な場合の対策としては、胃腸と腎臓に加え、呼吸器系も温めながら強化します。胃腸と呼吸器系の強化に役立つ代表的な処方には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)があります。ここに薬膳素材として有名な冬虫夏草(とうちゅうかそう)を加えるとさらに腎臓強化や体を温める力が向上します。冬虫夏草を使った代表処方には双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)があります。
頻尿や尿漏れなどの場合には腎臓を強化することが基本になります。体を温めて腎臓を強くする処方として八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)がよく使われます。また収斂作用のある生薬は、汗や尿が漏れ出るのを防ぐ働きがあるとされ、そのいくつかを含むものに参馬補腎丸(じんばほじんがん)があります。尿漏れには骨盤底筋の体操を一緒に行うとより効果的です。
水様のおりものが多い場合も、胃腸や腎臓を強化します。そして収斂作用のある生薬を併用するとより効果的です。実際には月経の状態や他の体調も考慮して用いる処方を決めることになります。
日本記念日協会では2月20日を『尿漏れ克服の日』と定めています。実に女性の四人に一人は尿漏れで悩んでいるというデータがあるそうです。出産を経験すると下腹部組織を支える骨盤底筋が弱ってしまうことが大きな原因です。骨盤底筋の体操は、いろいろな書籍やインターネットの情報で見ることができます。漢方薬や体操を活用して早めの解決を目指しましょう。

写真:早春に開花するサンシュユ
秋に赤く熟した果実が生薬の山茱萸
収斂作用を有する生薬の一つとなる
執筆者情報

研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
(中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武) - 「風薬治血」-風薬による血病治療
(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
(中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌) - 補陽還五湯の応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華) - 黄耆の運用経験
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春) - 黄耆の医案3例
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌) - 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸) - 応用範囲の広い温胆湯
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南) - 温胆湯の症例報告
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
