漢方日記

夏の食養生《知って得する漢方12_’07.8》

暦の上では間もなく立秋を迎えますが,7月後半から8月の中盤にかけてが,最も暑さの厳しい時期と言えるでしょう。この季節に出回る青果物は水分が豊富で体を冷やすものが多くなります。火照った体をクールダウンさせるには好都合ですし,旬のものを食べることは大変理にかなったことと言えますね。ただし,冷房のよく効いた部屋で,冷蔵庫や冷凍庫の冷たい飲食物ばかりを摂り過ぎますと,胃腸障害を引きおこし,さらには夏バテの原因となりますので注意しなくてはなりません。

夏の旬の食材

体を冷やす働き:さて,夏の旬の素材としてまず思いつくのは,キュウリ,トマト,レタス,スイカなどですが,これらは生のまま食すことが多く,そうすることで体を冷やす働きが一層発揮されます。

また,エダマメやインゲンマメ,ピーマン,ナス,ゴーヤなど,火を通していただく素材もいろいろあり,栄養価も高いので,ぜひとも取り入れたいものです。夏野菜の体を冷やす性質も,火を通すことで冷やしすぎを予防できます。

緑豆

水分代謝を向上させる:中国で夏の食材として有名なのが,緑豆(りょくとう,りょくず)や冬瓜(とうがん)です。緑豆はモヤシや春雨の原料として有名ですが,中国ではお粥やスープにされ,家庭料理に欠かせない食材です。冬瓜は決して冬場のウリという事ではなく,冬まで保存できるという意味で名付けられています。豆類や冬瓜は,水分代謝を向上させる働きがありますので,むくみのある時などには活用したい食材です。

胃腸の働きを回復させる:胃腸の働きが鈍くなってしまった時には,シソの葉などの香りの良いものや,ショウガ,梅干しなどが胃腸の働きを回復させてくれます。またこれらには雑菌の繁殖を抑え,食中毒を予防する効果も期待できます。

味付けとタンパク源

味付けでは自然とさっぱりしたものが食べたくなります。濃い味付けは,体の中に火照りや炎症を助長する原因となり,漢方では体内に熱を発生させるものと理解されます。ですから自然に夏場は体が薄味を求めるのかもしれません。

また野菜や果物だけでなく,アジやウナギ,アユなどの魚類も旬となります。夏バテを防ぐ重要なタンパク源となることは言うまでもありませんね。