漢方の考え方
高血圧症の漢方薬《知って得する漢方19_’08.3》
私たちの血管は,次第に柔軟性を欠き硬くなって行きます。いわゆる動脈硬化です。血圧が高値の場合,動脈硬化の進行が早く,動脈硬化が強度になると,動脈の内部が細くなって血液の流れが悪くなります。その結果血管の豊富な臓器の機能が障害されていきます。この影響を受けやすいのが,脳・心臓・腎臓です。大切な臓器や血管を守るため,過度の血圧上昇や血行不良は改善しておかなければなりません。
高血圧症では,自覚症状のない方もおられますが,多くの場合,のぼせ,頭痛,めまい,耳鳴り,肩や首のこりなどの症状が発生します。
西洋医学と漢方との違い
西洋医学では心臓・血管の神経や細胞に作用する薬や利尿薬などを使い,直接血圧を下げる治療を行います。一方漢方では,下記のように体格や自覚症状に合わせた漢方薬を用い,体質や症状の改善を図ります。血圧は結果的に下がるのを待つことになります。
西洋医学と漢方では考え方や作用のしかたが異なりますので,互いの利点をうまく活用したいものです。また,食事や運動,睡眠,ストレスなどの点検・改善も重要です。
漢方での考え方
『体を構成する気・血・水のバランスから』
- 気の停滞:気とは,気力・体力・機能などを指します。気の停滞とは,精神的ストレスなどの要因で,気持ちがイライラしたり,高ぶりやすい状態を意味します。ひどくなると,カッカとのぼせたり,さらには頭痛や耳鳴りを引き起こします。このような状態の時,血圧は必ず上昇しています。気の停滞を改善し,気持ちを落ち着かせる薬草として,セリ科の柴胡(さいこ)やアカネ科の釣藤鈎(ちょうとうこう),キク科の菊花(きくか)などが用いられます。
- 血の停滞:血流が悪い目印として次の3つが挙げられます。①痛む(頭痛,関節痛など)②黒ずむ(唇や舌の色が暗いなど)③しこる(イボ痔,腫瘍など)。血流を改善する薬草として,セリ科の川芎(せんきゅう)やシソ科の丹参(たんじん)などが多用されます。
- 水の過不足:加齢と共に,細胞の潤いは失われて行きます。水分代謝が悪いとより必要な水分が不足する一方,痰などの水毒(病理産物)が増えてしまいます。必要な水分の不足は,体の火照りを生じさます。これはお年寄りに見られる手足のほてりや口の渇きの原因と考えられ,血圧上昇の一因ともなります。また,痰などの余計な水分は,気や血の流れを邪魔するため,やはり血圧を含め,様々な障害となります。水分代謝を高める漢方薬として六味地黄丸(ろくみじおうがん)が有名です。また余計な水分を排泄させる薬草として,サトイモ科の半夏(はんげ)やサルノコシカケ科の茯苓(ぶくりょう)などが多用されます。
※実際に漢方薬を服用する場合は,専門家とよくご相談下さい。
※病院の血圧の薬と漢方薬を併用する場合も,よく専門家とご相談の上,服用下さい。