漢方日記

藍の力《NaturalLife49_’14.12》

空気が冷たく乾燥する季節、カゼやインフルエンザが心配です。できるだけ体カを落とさぬよう、食事のバランスや生活習慣に気を付け、また手洗いとうがいを実行したいものです。

中国では学校で冬になると子供達に板藍根という薬草の煮汁でうがいをさせる習慣があるそうです。この板藍根という薬草が元々何であるのかを調べますと、いくかの植物の根が同じ板藍根という名前で流通してきたことが分かります。

夕デ科のアイ、アブラナ科の夕イセイやホソバ夕イセイ、キツネノマゴ科のリュウキュウアイ、マメ科の夕イワンコマツナギといった植物です。聞き慣れない名前がほとんどだと思いますが、アイは藍染めの染料をとる代表的な植物で、リュウキュウアイは沖縄の藍染め、夕イワンコマツナギはインドの藍染めの原料です。またアイヌに伝わる藍染めはエゾ夕イセイが原料で、これはホソバ夕イセイの変種とされています。つまりこれらの植物は共通して藍色の色素を含んでいて、染料としても活用されてきたのです。

藍染めの原料が地域によって異なっていたということも興味深いですし、染料としてだけでなく薬草として同じ薬効でしかも同じ名称で用いられているということに面白さを覚えます。

日本での藍染めは江戸時代頃から大きく発展したようですが、藍染めの肌着を着ると冷え症や肌荒れ、あせもなどに良いとか、防虫効果があるなどと言われてきたそうです。全て鵜呑みすることはできませんが、藍の色素に昔の人々も一定の効果を感じていたことがうかがえます。

ホソバタイセイ
写真:アブラナ科ホソバタイセイ