漢方日記

金箔を用いた漢方薬《NaturalLife61_’16.1》

新年明けましておめでとうございます。
皆様今年のお正月はいかが迎えられたでしょうか?

お正月といいますと,お飾りやら,着るもの,食べるものなど,様々なものが華やかに色どられます。とくに金色が添えられますと,いっそう豪華に見えるものです。金箔入りのお酒やおせちを召し上がった方もおられるのではないでしょうか。

金属の一つである金は,非常に反応性の低い安全な物質です。人体に入っても体内を素通りしてそのまま排泄されます。金粉や金箔は味もなく,食品に花を添えるものとして利用しやすいため,食品添加物として認可されています。

体内で全く反応しないとすると,毒性はもちろん薬効もないように思いますが,漢方では金箔を生薬として用いることがあります。金箔を用いることで有名なものに安宮牛黄丸(あんぐうごおうがん)や牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)があります。

漢方薬古来の剤型の一つである丸薬(丸剤とも)は,必要な生薬をすりつぶして粉末とし,蜂蜜などで団子状に丸めたものです。携帯がしやすく,また作り置きができる剤型です。旅に持って行く薬,ゆっくりと吸収させる薬,高価で少量用いる薬などに応用されます。一般的に金箔は,高価な生薬を用いた丸薬の外側を覆う形で使用されます。そうすると煌びやかな金色の丸薬ができあがります。

前出の二処方は,高熱でけいれんやうわごとを生じる状況や,興奮が強い状態で用いる丸薬です。牛黄(ごおう・牛の胆石)や麝香(じゃこう・ジャコウジカの分泌物で,香料として有名)などの貴重な生薬が利用され,外側を金箔が覆います。

こうした丸薬は高い値段で流通していますが,金箔を使用する目的は,決して高貴性を主張するためでも,きれいに見せるためでもありません。金箔には精神を落ち着かせる働きがあると昔から認識されてきました。丸薬の製剤で最後に金箔で覆えば,興奮を和らげる作用がいっそう増すと考えられてきたのです。

日本でも数社から牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)が発売されています。メーカーによって配合生薬や大きさに差を認めますが,日本人向けに胃腸を補う薬草なども加えられ,虚弱体質や食欲不振の改善が効能となっています。
牛黄清心丸
どちらも牛黄清心丸 製造メーカーが異なる