漢方日記

アンチエイジングと漢方《NaturalLife68_’16.8》

「アンチエイジング」という言葉をよく耳にします。直訳すれば「抗加齢」「抗老化」ということですが,もちろん加齢を止めることはできません。加齢も老化も自然な変化ですから,抵抗するわけにはいかないのですが,若々しく老いることができるのであれば,そうありたいものです。

50歳前後を過ぎると目,耳,骨,脳,血流,尿,髪,皮膚などの問題が生じやすくなります。また胃腸や呼吸器の衰えも時に深刻な状態を引き起こします。漢方ではこうした問題の根源に根本的な生命エネルギーである「精(せい)」の減少があると考えます。精の減少がすなわち老化の原因なのですが,やはりこれは自然な変化です。しかしその減り方に個人差があり,減り方が早ければ実年齢よりも早く老けるということになります。また衰えに加えて,血行の悪さや老廃物の蓄積,ストレスの影響,冷えなどがあると,様々な症状につながります。そこで加齢に伴う諸症状の治療には,精を補うとされる生薬と,個々人の状態を考慮した生薬を組み合わせた処方を用いることが基本となります。

最近,加齢を象徴するシミやしわ,頻尿,物忘れなどは血流が大きく関わっていることが指摘されています。とくに毛細血管と呼ばれる細い血管の影響が注目されています。毛細血管の直径は5~10μmで,これは髪の毛の10分の1です。動脈と静脈の間にあり,体中に張り巡らされた毛細血管は,血管総延長の99%を占めます。体のすみずみまで酸素や栄養を届けたり,老廃物を回収するのも毛細血管で行われているのです。

ところが,血液の質が糖分や脂分の過多で悪化したり,冷えやストレスで血流が抑制されると,毛細血管中の血流も悪くなり,毛細血管が退化してしまう現象が観察されています。退化した毛細血管を復活させるには血流改善が必要です。

運動では,第2の心臓といわれるふくらはぎを鍛えるかかとの上げ下げや,スキップ,縄跳びなどが推奨されます。また,食事のバランスや睡眠などの生活リズムも大切です。

漢方で精を補う処方として有名な八味地黄丸は約二千年前の処方ですが,不思議なことに血流を改善する生薬を含んでいます。現代は食生活の乱れやストレスなどにより血液の汚れや血管の損傷が一層深刻です。若々しく老いるために,漢方でもさらに血流改善に役立つ生薬が活躍する時代です。

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会