漢方の考え方
体内で発生する風《NaturalLife74_’17.3》
先月の本稿では,ウイルスや花粉など,カゼ様症状を生じさせる目に見えない外敵を風邪(ふうじゃ)と認識するというお話をいたしました。今回は外から侵入するのではなく,体内で発生する風についてお話しします。
外から入る風邪(ふうじゃ)を外風(がいふう)と呼ぶのに対し,体内で発生する風は内風(ないふう)と呼び,区別します。内風による症状を挙げますと,めまいやふるえ,筋肉の引きつりなどがあります。です。屋外で強風に当たれば,立っていられず,しゃがんだり伏せたりします。ところが強風や地震でもないのに揺れを感じ立っていられなくなってしまう現象は,体内に発生した風によるのだと考えたのです。
自然界の風は空気の移動です。空気は気圧の高い所から低い所へと流れます。では体内の風はどうして生じるのでしょう。
漢方の古典に,「諸風は皆肝に属する」という言葉があります。五臓六腑の一つ「肝」に原因があるというのです。漢方の認識では「肝」の重要な役割として「疏泄(そせつ)」や「蔵血」があります。
「疏泄」とは気の巡りを良くして,内臓同士の連携をコントロールすることで,しばしば現代医学の自律神経にたとえられます。自律神経が精神的ストレスの影響を受けやすいように,「肝の疏泄」もストレスの影響を受けます。緊張で手や声が震えるのは,精神的な抑圧で気の流れに異常が生じ,体内で気圧変化が起こった結果といえるでしょう。
「蔵血」は血を蓄えること。とくに昼間循環している血液は夜に「肝」に戻ってきます。この蔵血作用が失調して血の不足を生じると,様々な症状が発生します。脳が養えなくなると頭がふらつきます。神経や筋肉も血による栄養が拠り所であり,血の不足で適応能力が衰え,けいれんや引きつりが生じます。まぶたがピクピクとけいれんしたり,ふくらはぎや指などがつるのも,血の不足と関連することが多いです。漢方でいう血の不足は必ずしも現代医学の貧血とは限りません。蔵血作用の失調を引き起こす原因には,睡眠不足や月経・出産・怪我・手術などによる失血,消化吸収力の低下,緊張(疏泄の亢進)による消耗などが考えられます。
漢方生薬の中には体内の風を鎮めるとされる熄風薬(そくふうやく)という分類があります。熄風薬と併せて血を補うことが内風対策として重要です。時に血の流れや水の流れが関係するめまいなどもありますので,漢方薬をご利用の際は専門家とご相談ください。
写真:熄風薬の一つ天麻(てんま)
ラン科オニノヤガラの地下茎を乾燥したもの

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研究報告・講演等
翻訳
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(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
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(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
