漢方日記

漢方の夏バテ対策《知って得する漢方11_’07.7》

高温多湿の日本の夏,さらには体質や普段の生活習慣などに起因して様々な体調不良が発生し,夏バテに至る恐れがあります。

主な症状

①多汗による疲労:多量の発汗によって水分やミネラルが失われ,その補給が遅れると,体の疲労を招きます。

②クーラー病:元来冷え症の方にとってはクーラーの冷たい風は大敵です。夏は汗腺がゆるんでいるので冷気で容易に冷えてしまいます。また,屋内外の温度差が大きいと,自律神経にも負担がかかります。

③冷飲食による胃腸障害:冷たいものが美味しい季節。しかし冷飲食のとり過ぎは胃腸の働きを鈍らせ,下痢や食欲不振を引き起こします。

水分補給と水分代謝

暑い環境下で汗をたくさんかけば水分補給が大切ですが,もしここでクーラーの効いた部屋で冷たい飲料をがぶ飲みしてしまうと,上の②③のごとくです。何事もほどほどが肝腎。また,とり入れた水分を有効に利用するには,水分代謝がよくなければなりません。冷えやすい方,むくみやすい方,胃腸の弱い方は,水分代謝が弱まっている可能性がありますので,水分の取り方にも注意が必要です。

水分代謝を改善

漢方では水分代謝を改善する薬草がたくさん知られています。

①体に潤いを与える薬草:有名な朝鮮人参や,その仲間で北米原産の西洋人参は,過労や多汗による栄養不足を補う働きがあります。また,ユリ科ジャノヒゲの塊根である麦門冬(ばくもんどう)も粘膜や皮膚を潤すのに有効です。

②水分の停滞を改善する薬草:むくみやタンは水分の停滞と考えます。また胃がタプタプしたり,下痢・嘔吐,体が重い,舌の上のコケが厚いといった状況も,水分の停滞によることが多いです。こういった状況を改善するには,キノコ類の茯苓(ぶくりょう)や猪苓(ちょれい)が有効です。また芳香性の高い薬草は,胃腸の働きを高めたり,発汗力を高めることで水分の停滞を改善します。

※体力不足・冷え症で,クーラーが苦手という方は,体を温めて血行をよくする当帰(とうき)や,免疫力を高める黄耆(おうぎ)などを含む漢方薬で,体質の改善を図りましょう。