漢方の考え方
男性更年期障害の漢方薬《知って得する漢方15_’07.11》
男性の更年期障害が注目されるようになったのは,ここ5年ほどのことです。45歳から65歳の働き盛りの男性に見られ,疲労感の持続をうったえる人が多いのが特徴的です。そのほか以下のような症状があらわれます。
■精神面:無気力,集中力の欠如,イライラなど。
■身体面:疲労感,筋肉のだるさ,頻尿,冷えのぼせ,頭痛など。
■性機能面:意欲の減退,機能の低下など。
男性更年期障害は,加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下が原因とされています。しかし女性の更年期における女性ホルモン(エストロゲン)の減少のように急激な変化ではなく,また低下の程度にはかなりの個人差あります。一般に責任感や競争心が強く、まじめで神経質な人は男性更年期障害を発症しやすいと言われています。
漢方での考え方
一般に五臓六腑と呼ばれる漢方の内臓観から,男性更年期障害について考えてみたいと思います。
- 腎(じん):生まれたときに親から受け継いだエネルギーや,食事から吸収したエネルギーを蓄える場所です。この蓄えが減少することによって老化が進みます。ということは,更年期障害と最も関係が深い臓器といえそうです。またさらに,生殖器系や泌尿器系,腰,耳などとの関連も強い臓器です。ですから更年期障害の改善や,老化現象の緩和において,腎を補うということは非常に重要な方法と考えられます。
- 肝(かん):血液を蓄え,神経や筋肉を滋養して活動を整えます。ストレスでイライラしたり,筋肉がだるい・しびれるといったことも,肝との関連が疑われます。
- 心(しん):血液のポンプとしての役割のほかに,心(こころ)の活動も調整する場所です。不安感や不眠がある場合は,心を養うといわれる薬草を使います。
- 脾(ひ):漢方における解釈では,脾は消化吸収を行う臓器です。飲食物から気力・体力を作り出す大切な場所です。
- 他の臓腑との関連も状況に応じ考慮します。
以上の考え方などをもとに,実際の症状や体質にあう方剤を選択してゆくことが漢方薬による男性更年期障害の対策になります。
ただし,生活の環境や考え方にも非常に影響を受ける疾患です。薬だけで治すということではなく,日々の過ごし方などについても見直して行きましょう。
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腎と脾を補う参馬補腎丸(じんばほじんがん)
海馬(かいば:タツノオトシゴ)などを含む