漢方日記

秋の養生《知って得する漢方37_’09.9》

梨、栗、柿、ブドウ、秋刀魚、鮭・・・。秋は旬の味覚盛りだくさん。まさに「実りの秋」「食欲の秋」ということになりますね。

また、秋は草木の枯れ行く時でもあります。鮮やかに枯れる紅葉もあれば、弱々しく地に絶えていく矮小な草たちもあります。その姿は実りのイメージとは対照的ですが、いずれも冬に向かう自然の姿として混在します。

漢方の古典に見る秋

古来、漢方に伝わる養生書では「人も自然界の一部であり、自然界の法則が人の営みの法則でもある」という考え方が貫かれています。

そういった養生書に,秋の特徴として「万物の成熟」「収穫の季節」「涼しく風が強い」「粛殺(しゅくさつ)の気(草木を枯らす空気のこと)」「乾燥の季節」などの表現が見られます。

そして秋の養生法として「鶏のごとく早寝早起きをする」「こころ安らかに過ごす」といったことが挙げられています。そうすることが精気を奪う「粛殺の気」や「乾燥の季節」の影響を緩和させることになるというのです。どうも「秋の夜長」を楽しむとはいかないようです。

もし秋の養生を怠った場合、その影響を最も受ける臓器は「肺」であるとされています。漢方でいう「肺」とは呼吸を行うほか、水分代謝などにも関与し、鼻や皮膚、大腸との関連が深いとされています。

食養生に関するものを見てみますと、秋には肺を潤す物を重んじています。とくに旬の果物はその効果が高いようです。ただし、梨や柿は体を冷やす食べ物ですから、食べすぎにも注意が必要です。旬の素材の一つであるギンナンは、肺を潤すことよりもむしろ引き締める「収斂」に働きます。喘息や咳嗽を和らげる目的で用いられることがあります。その他、ヤマイモや白キクラゲ、白ゴマなどは肺を強くすると言われています。

秋の体調

もともと秋には喘息の症状が悪化する方が多く見られます。また最近では秋の花粉症も急増しています。さらに精神的に不安定になりやすく,不眠や抑鬱感などを感じる方も多くなるようです。乙女心のごとく変化しやすい秋の天候は,自律神経への影響など,人間の心身に大きな負担を与えると考えられます。そのような季節を乗りきるためには,バランスの良い食事や規則正しい睡眠で体調を整えることが大切です。また,「運動の秋」,「読書の秋」など自分なりの「○○の秋」でリフレッシュやリラックスを心がけたいものです。