漢方の考え方
「気」のお話《知って得する漢方42_’10.2》
漢方の世界では,人体を観察したり薬を選択する際に「気」という体の要素を重視します。一般的に気は「元気」「気持ち」など体力や精神状態を表す言葉として使われていますし,「天気」「空気」「雰囲気」など自然界の要素や場の状況を表す言葉としても汎用されます。時に,東洋医学における気というと,摩訶不思議な気功術や胡散臭い奇術が連想されることもありますが,本来私たちが扱う気というのは決して特別な物ではありません。わかりやすく言えば「力」や「機能」と言えるでしょう。
例えば,消化吸収という機能は胃腸の気によるものですし,呼吸は肺の気によります。疲れてやる気が出ない場合には元気の気やこころの気が不足しているのかもしれません。気の不足は気虚(ききょ)と呼ばれ,その治療は気を補養する補気(ほき)を行うということになります。また,イライラしてため息が多い場合や,お腹にガスがたまって膨満感を感じる状態は気が停滞しているととらえ,気滞(きたい)あるいは気鬱(きうつ)と表現します。さらに,嘔吐やゲップなど本来下降すべきものが逆行する様子は気逆(きぎゃく)と判断します。
人はもともと両親から受け継いだ先天の気を有し,さらに飲食物から吸収した栄養分を後天の気として補充します。このように“気”とは私たちの体に当たり前に存在し,機能する物です。漢方ではその“気”の過不足や流通の状況を様々な症状や体質から判断して,薬の選択の根拠としているのです。
「病は気から」と言われますが,まさに“気”が関わる体調不良は大変多いと言えます。過労やストレスが“気”の失調を引き起こす原因となりやすいためです。しかし「気のせい」だからと放っておかれることも多く,周囲からも理解されにくい面があります。それこそ“気力”に余裕があれば乗り越えられるかもしれませんが,頑張るほど症状が強くなることもしばしばです。様々な検査機器のない状況で人を見る経験を重ねてきた漢方では,「気のせい」なら「気を治療する」のが当然となります。
どんなに精巧に骨肉を組み立てて血流を通しても,この“気”がなかったら生命の営みは生じません。私たちは,聖火リレーの如く,命の灯たる“気”を親から子へ脈々とつないでいるのですね。
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研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
(中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武) - 「風薬治血」-風薬による血病治療
(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
(中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌) - 補陽還五湯の応用
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(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌) - 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
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(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南) - 温胆湯の症例報告
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
