漢方の考え方
「血」のお話《知って得する漢方43_’10.3》
漢方では「血(けつ)」と呼びます。その生成・循環・役割などについては,現代医学に通じる部分もありますし,漢方独自の部分もあります。
血の生成と循環
血は飲食物からの栄養,水分,そして吸い込んだ清い空気などから生成されます。五臓六腑の肝に貯蔵され,心の気によって全身をめぐります。この循環のどこかに停滞が生じると,痛みやしこり,黒ずみなどが発生します。停滞した血流は「瘀血(おけつ)」と呼ばれ,その原因には冷えや精神的ストレス,飲食の不摂生などが考えられます。
また全身をめぐるときに通る血脈(けつみゃく)を支える気が不足すると,出血しやすくなります。アザができやすい,鼻血が出やすいといった体質や,不正出血などの一因となるわけです。他にも精神的興奮や夏の暑さなどによって血気盛んになりすぎたり,上述の瘀血などによっても出血が起こることがあります。
血の役割
血は全身に栄養や潤いを送り届けています。血が不足した状態を血虚(けっきょ)と呼び,この血虚や瘀血がある場合,十分に栄養や潤いを送り届けることができず,様々な症状が引き起こされます。めまい,立ちくらみ,肌の乾燥,便秘,筋肉のつり,月経の遅れなどは血虚でよくみられる現象です。
血のもう一つの重要な働きに,精神活動を支えることが挙げられます。血を貯蔵する肝は,現代医学における自律神経の働きに相当する役目も担っています。自律神経は呼吸や拍動,消化などの生命活動をコントロールするもので,これらの働きは精神状態や活動状況に合わせて行われます。ですから強い精神的ストレスが自律神経の失調を引き起こすのはもっともなことです。漢方的に考えると,肝の貯蔵血が不足していると,肝の働きが薄弱になり,ストレスに弱い体質となったり,感情的になったりします。女性が感情的なのは,月経によって肝の貯蔵血の増減が大きいためと理解できます。
さらに血流をつかさどる心はこころの統括も担っており,血虚の影響が心に及ぶと気分の落ち込みや不安感などが生じます。
このように,血は臓器,筋肉,神経そして精神面にまで影響する大切な要素なのです。