漢方日記

夏の体調管理《NaturalLife35_’13.8》

近年,夏の猛暑が続いています。熱中症の予防のため,発汗で失われる水分や塩分などの補給が叫ばれています。しかし一度にたくさんの水分を飲んだ場合,胃腸がそれをきちんと処理をすることが出来ずに,下痢や消化不良,食欲不振の原因になることがあります。そのため少量ずつこまめに補給することが勧められます。

また冷たい飲み物はのどごしがよく,ほてった体には心地よいのですが,これも度を超すと胃腸の働きを鈍くし,様々な障害を引き起こしたり,夏の疲れを助長する恐れがあります。

お腹を冷やさずに,効率よく水分が吸収されれば,夏ばてや熱中症の予防に役立ちますが,体のバランスが崩れて水分代謝がうまくいっていない場合には漢方薬が役立ちます。

体がほってって大汗をかき,のどの渇きも強く,水分を多量にとってもこれらの状況が改善しない体質には,鉱物生薬である石膏(せっこう)を用います。代表処方は白虎湯(びゃっことう)です。心身のほてりをクールダウンさせる漢方薬です。

のどの渇きやすさに加え,気力体力の低下や,息切れ,動悸などが気になる体質には,生脈散(しょうみゃくさん)が使用されます。体に力と潤いを与える漢方薬で,猛暑による疲労を軽減するのにも役立ちます。

水を飲むとお腹がチャプチャプとして苦しくなる方がおられます。またむくみがひどいなど,いわゆる水毒(水分の停滞)の体質が考えられる場合には五苓散(ごれいさん)が役立ちます。

水分の摂り方だけではなく,室温管理も難しい問題です。冷やしすぎは体に良くないので,冷房の使用を敬遠する方もおられますが,猛暑の日には室内でも熱中症の発生が少なくないことから,冷房が推奨される事態になっています。夏は汗をかきやすいよう皮膚の汗腺がゆるんでいます。これは夏の暑さに慣れた体といえますが,そこに直接冷気が当たると,抵抗力が落ちていたり,自律神経のバランスが失調している方では,容易に体調を崩してしまいます。冷房が苦手という方の中にはこういったケースが少なくありません。職場環境の冷房が強い場合には,夏でも体を温める工夫が必要です。

古来涼を得るための知恵がいろいろとありましたが,近年の異常な猛暑には科学的・機械的な物を利用することも必要です。ただ,度を超えない配慮もお忘れなく。