漢方の考え方
家族みんなで漢方薬《NaturalLife43_’14.5》
5月5日はこどもの日。祝日法では「こどもの人格を重んじ,こどもの幸福をはかるとともに,母に感謝する」ことを趣旨とするのだそうですが,何と言っても健康が一番ですね。そうはいっても育児に病気はつきもので,親にとっては心配が尽きません。
幼稚園などで感冒が流行すると必ずもらってきて家族中が罹患してしまうというケースにもしばしば遭遇します。症状が出ている間はまず症状の緩和が目標となりますが,症状が治まったら家族みんなで免疫力を高めることを考えましょう。漢方薬も役立ちます。代表的な処方には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがあります。
しかし漢方薬以上に大切なのは生活養生です。早寝早起き,適度な運動,そして食事のバランス。甘い物や油っこいものは控え目にして,野菜・タンパク質・穀類をまんべんなく。発酵食品も取り入れ,できるだけ温かい物を中心に。そしてよく噛んで食べることも肝心です。
生活習慣の改善はさらに心身のバランスを整えるのにも役立ちます。カゼをひくことなどはなく元気なのだけれど,元気過ぎて大変という子もいることでしょう。授業中じっとしていられなかったり,友達から悪口を言われると言い返すより先に手が出てしまうといったお話もよく聞くようになりました。このような場合は,教師やカウンセラー,医師などによる指導が必要ですが,それと平行して漢方薬は役立たないだろうかとご相談を受けることがあります。その時まず考えられる漢方処方は抑肝散(よくかんさん)です。内臓の一部である肝は心身のバランス調整をする所と漢方では考えます。感情が高ぶったり,緊張で手が震えたり,ストレスで胃腸が失調するのは,肝の激高ととらえます。肝の激高を抑制するための処方が抑肝散というわけです。抑肝散はしばしば親御さんにも一緒に服用していただくことがあります。母子同服(ぼしどうふく)と呼ばれる飲み方です。心が通じ合う間柄だからこそ,イライラも共鳴してしまう。一緒に心が落ち着くのを目指します。
家族と一緒に治療や生活改善に取り組むと,小さなお子さんでも積極的になれるという利点があるようです。「こどもの幸福をはかるとともに,母に感謝する」そんな家族像にも通じる気がします。