漢方の方剤
葛根湯は万能薬に非ず《NaturalLife51_’15.2》
昨年の暮れにテレビの人気情報番組で漢方薬が特集されました。翌日からかなりの反響が私の薬局にもあり、とくにかぜの治療で有名な葛根湯(かっこんとう)という処方を求めてのお問い合わせやご来店が多数ございました。大変ありがたいことではあるのですが、お問い合わせの内容に首をかしげてしまうことがたびたびでした。私はこの番組を録画してはあったのですが、すぐに見ることができず、数日後に番組を見て、不思議な問い合わせが続く理由を知ったのです。
番組に登場した医師は「葛根湯は万能薬」「とくに“痛み”の症状があれば何でも効く」「落語に、かぜでも頭痛でも腹痛でも葛根湯を出す“葛根湯医者”という話があるぐらい葛根湯は何にでも使える」という趣旨のお話をされていました。この話を私は大変恐ろしく感じました。確かに葛根湯は二千年の歴史がある素晴しい処方ですが決して万能薬ではなく、使い方を誤れば副作用の危険性もあります。
そもそも“葛根湯医者”は、医薬に関する落語が演じられる際、その前振りの小話として以下のように語られます。
「先生、頭が痛てえんで」「ああ、頭痛だな。葛根湯を煎じて飲みなさい」「先生、おなかが痛いんでございます」「腹痛だな、葛根湯をおあがり」「先生、目が痛くて」「ああ、葛根湯をおあがり。はい、次の方」「いや、私はつきそいに来ただけで・・」「まあいいから葛根湯をおあがり」。どんな病に対しても分別なく葛根湯を用いる藪医者を滑稽に描いたものです。この話を根拠に何にでも使えるというのは乱暴な言い回しとしか考えられません。
それでは葛根湯が単なるかぜ薬かというと、そういうことでもありません。先人達の記録を見ますと、かぜ以外にも肩こり、腰痛、下痢、視力障害、皮膚炎、乳汁分泌不足などの治療に良好が得られたという報告は確かにあります。しかし決して葛根湯医者のように安易に用いているのではありません。葛根湯の本質をきちんととらえた上でお腹や目の病にも応用しているのです。一方かぜなら葛根湯でよいかというと、こちらもそうではありません。かぜに対応する漢方薬は多々あり、症状や体質によって使い分けます。
漢方薬に限らず、お薬はテレビなどの情報を安易に鵜呑みにせず、よく医師や薬剤師にご相談の上、使用して下さい。

葛根湯の主薬 葛根の原植物 クズの花
執筆者情報

研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
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(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
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(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
