漢方の生薬
ベニバナとサフラン《NaturalLife55_’15.6》
6月から7月に鮮やかな黄赤色の花をつけるベニバナは、染料や食用油の原料として有名です。一大産地の山形県では県花に指定されています。漢方においても汎用される重要な薬草です。
原産はエジプトあたりと考えられており、紀元前2500年ごろのミイラの着衣にもベニバナの色素が確認されているそうです。日本にはインド・中国を経て伝わったとされており、奈良県生駒郡斑鳩町の藤ノ木古墳(6世紀)の石棺内でベニバナの花粉が見つかっています。江戸時代には栽培が大規模になり、品質の良いベニバナを産した米沢藩では、藩の財政を支えるほどの存在だったとのことです。
花は咲き始めに黄色を呈し、徐々に赤くなっていきます。ベニバナに含まれる黄色の色素は水に溶けやすく、赤色の色素は水に溶けにくいため、色素を取り出すときには花を水にさらして色を分離します。
薬草として利用する場合には、紅色の花を摘み、乾燥させます。薬草としては紅花を音読みし、「コウカ」と呼ばれます。紅花は血流改善に優れる生薬として様々な処方に含まれます。
漢方書の中で、紅花と並んで紹介される生薬に番紅花(ばんこうか)があります。一見似ているため、混同されていた歴史もあるようです。薬効も類似しているのですが、本質は全く異なる物です。写真を見て分かる方もおられると思いますが、番紅花とはサフランのことです。サフランはアヤメ科の植物でそのめしべを香辛料や薬草として用います。番紅花は紅花と比較して大変高価で、一回の使用量は少量です。女性の更年期障害などでは番紅花が良効を示すこともありますが、使用頻度はあまり高くありません。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病の多くは血行障害が生じています。これらの改善にしばしば利用される血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)や冠元顆粒(かんげんかりゅう)は、紅花を含む代表処方です。
ベニバナの花
紅花(こうか)
番紅花(サフラン)