季節・天候と漢方
暑気払いの知恵《NaturalLife56_’15.7》
夏の暑苦しさを取りはらうため、冷たい食べ物や体を冷やす効果のある食品・漢方薬などを摂取することを暑気払いといいます。冷えた清涼飲料水やビール、かき氷などを思いうかべる方も多いかと思いますが、漢方の考え方に基づけば、「体を冷やす効果のあるもの」は冷たいものとは限りません。
旬の食材に注目してみますと、胡瓜(きゅうり)、西瓜(すいか)、冬瓜(とうがん)、苦瓜(にがうり=ゴーヤ)などのウリ科の果菜やトマト、ナスなどは、体の熱を取る働きがあると言われています。
暑さで食欲のないときに重宝されるのが素麺ですね。間もなく七夕ですが、七夕は麦や野菜を供えて神に感謝を捧げる収穫祭でもあり、天の川に見立てた素麺を食し、無病息災を祈る習慣もあったそうです。
夏に麦茶がよく飲まれるのも、収穫時期に合うことや、やはり体の熱を取るとされていることに起因すると思われます。
夏の飲み物として最近甘酒も注目されるようになってきました。もともと甘酒は夏の季語であり、江戸時代には井戸で冷やした甘酒が人気だったそうです。アミノ酸やビタミン、糖類など栄養は豊富で、夏ばて予防につながるかもしれません。
ただ、甘酒にしても麦茶にしても、冷蔵庫で冷やしたものを多量に飲むことには注意が必要です。体が冷え、腹痛・下痢やだるさなどの症状を招きかねません。すり下ろした生姜を加えてますと、冷やす弊害が多少減少します。
中国では緑豆の飲料が夏に好んで飲まれています。中国医学では、夏の暑気を取り除く効能を「消暑」「解暑」「清暑」などと表現し、緑豆もこの作用を有するとされています。
ハスの葉は「荷葉(かよう)」と呼ばれ、暑さを取り除くとともに水分代謝を改善するとして利用されます。
シソ科の植物で芳香性の強いパチョリやカワミドリを乾燥させた生薬「藿香(かっこう)」も解暑に働き、夏のだるさ、夏かぜ、水あたり、食あたりなどに常用されます。藿香を主薬にした藿香正気散(かっこうしょうきさん)は常備薬としてあるいは旅行の時の携行薬として大変役立ちます。