イノコヅチ(猪子槌)と漢方

イノコヅチという植物をご存じですか?
秋の野原を歩いた後に、たくさんの小さな実が衣服に付着していることがあります。このような植物は「ひっつき虫」などと呼ばれ、ひっつき虫の一つにイノコヅチがあります。

ひっつき虫

ひっつき虫

イノコヅチ

イノコヅチ

イノコヅチの節

イノコヅチの節

名前の由来として、猪(いのしし)の子の毛に実が着きやすいことから「イノコヅチ」となったという説があります。しかし一般的に当てられる漢字は「猪子槌」で、槌(つち)は木槌や小槌の槌、つまりハンマーの形を意味し、膝(ひざ)の形を表現していると言われています。なぜ「猪の子の膝」なのかというと、イノコヅチの茎は枝葉が着く部分が肥大した節となり、その節が猪の子の膝のようであることが語源とされています。

イノコヅチにはヒカゲイノコヅチという別称があります。イノコヅチの近縁植物に日向を好むヒナタイノコヅチがあり、これと区別するときに使われる名称です。これらを総称してイノコヅチと呼ぶこともあります。

写真を見ていただければ見覚えがあるという方も少なくないと思います。やっかいな雑草だと思われた方もおられるでしょう。比較的身近な野草です。実はこのイノコヅチ、とくに根が太くなるヒナタイノコヅチは漢方で使われる重要な薬用植物です。根を乾燥した物が薬用となり、生薬名は牛膝(ごしつ)です。

牛膝

牛膝

牛膝は筋骨を丈夫にしたり、血行を改善する働きがあります。足腰の衰弱、関節痛、しびれ、高血圧などの改善を目的とした処方に含まれます。代表処方には牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、独活寄生湯(どっかつきせいとう)、血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)、疎経活血湯(そけいかっけつとう)、折衝飲(せっしょういん)などがあります。
牛膝という名前は元々中国でイノコヅチに付けられた植物名です。肥大した茎の節を牛の膝に喩えたのでしょう。膝を連想させる植物の根が、人の膝などの関節痛に有効であることが何とも不思議です。

亥年の初めということで猪に関連する話を選んだつもりでしたが、いつの間にか牛の話になってしまいました。あしからず。