季節・天候と漢方
今年の春は・・・《NaturalLife108_’20.4》
この春、新型コロナウイルスの蔓延によって様々なイベントが延期や中止となり、また臨時休校や通勤形態の変更など、生活上様々な制限が余儀なくされました。目に見えないウイルスへの恐怖や、先の見えない不安感、さらに外出を控えることによる運動不足や精神的ストレスなど、心身への悪影響が懸念されます。
以前もご紹介したことがあるのですが、春の過ごし方について、漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』には次のようにあります。「春は、万物が新しいものを発する季節。天地の生気が発動し、全ての物が生き生きと栄える。人は少し早く起きて庭に出てゆったりと歩き、髪を解きほぐして体をのびやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させ、生まれたばかりの万物と同様にするがよい。ひたすら成長を促し、邪魔をしてはならない。大いに心をはげまし、体をしいたげてはならない。春の道理に反すると肝を損なう。」
草木が芽生え、動物たちが活動を始める自然界に倣って、人も伸びやかに生活をするのが良いとされています。ところが今年は様々な制限が春先から求められ続けてきました。少しでも春らしく健康であるためには、室内にいても心身をリフレッシュする意識が必要です。
道理に反すると肝を損なうとありますが、ここでいう「肝」は漢方でいう五臓六腑における「肝」であり、「肝を病む」=「肝臓病」ということではありません。「肝・心・脾・肺・腎」の五臓と「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」の六腑がそれぞれの役割を果たし、さらにうまく連携することで生命活動が営まれます。「肝」にはこの臓腑間の連携を統制する役割があります。この働きは現代医学でいう自律神経やホルモン、また情緒などのバランスを調整することに相当します。臓腑の連携がうまくいかずギクシャクすると「肝を病む」状態となります。例えば自律神経失調症や女性の月経前症候群、またイライラして怒りやすいといった状況は「肝」のトラブルと理解します。
「肝」はまた「血を蓄える」働きがあるとされます。活動時に全身を巡った血は、夜になると「肝」に帰ってきます。夜更かしをすると血の消耗が多くなり、肝の失調を引き起こします。「肝」を養うには、旬の色の濃い野菜やレバーなどをとるとよいといわれます。また少量の酸味の物を加えると「肝」への作用が高まるとされています。
前出の自律神経等のバランスの崩れには、香りの良い薬草を用います。シソやハッカ、ミカンの皮などは、漢方でも重要な生薬になります。
最近、室内での運動不足やストレスの解消になるとして様々な動画がネットで見られるようになっており、参考になります。ただし目の疲労には注意しましょう。目は肝と密接な関係があり、目を酷使すると肝を消耗することになるともいわれています。