漢方日記

帯状疱疹後神経痛の対策《NaturalLife127_’22.12》

皮膚にピリピリ・チクチクとした痛みや、水疱、赤みなどが現れる帯状疱疹。その原因は過去に罹患した水ぼうそうのウイルスです。体内に残ったウイルスが免疫力の低下をきっかけに再び表出し、発症します。治療は抗ウイルス薬が中心です。疲労、睡眠不足、冷え、ストレスなどは、免疫力の低下につながります。こういったことをため込まないようにすることが予防になります。最近ではこのウイルスに対するワクチンで予防する方法も知られるようになってきました。

帯状泡疹では、表面的な皮膚の症状が治まったにもかかわらず、痛みだけがしつこく残る場合があり、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。帯状疱疹後神経痛は、ウイルスが神経を傷つけるために起こります。その痛みは「焼けるような」とか「電気が走るような」などと表現され、服が擦れたり、風が当たったりするだけでも強く痛むことがあるといいます。個人差も大きく、夜も眠れないほど痛む方もいれば、夜間はよく眠れたり、何かに集中していると痛みを感じなかったりする方もいます。

帯状疱疹後神経痛には薬物療法や神経ブロック、理学療法など様々な治療法がとられています。しかしなかなか効果が見られずに治療が数年に及ぶ方もおられ、根気よく治療を続ける必要があります。一方、入浴で体が温まり血液の循環がよくなると痛みが軽減する方もいます。また、ストレスや疲労が痛みを増す原因となることもあるので、睡眠を十分にとって、リラックスして過ごすことも有用です。

漢方では帯状泡疹後神経痛に対して、気の流れや血の流れを改善する漢方薬が有効な場合があることが知られています。気の流れが悪い状態というのは、自律神経やホルモンのバランスが悪かったり、情緒が不安定だったりする状態と考えられます。やたらイライラする、ため息が多い、肩がこりやすい、こめかみ辺りの頭痛、胸・脇腹・肋骨下などが引きつる、ゲップが出やすい、お腹がはってガスが多い、手足は冷えて頭はのぼせるといった状態は、気の流れが悪いことで生じやすい現象です。このような時にはシソ、ハッカ、みかんの皮といった香りの良いものを生薬として利用します。またセリ科の植物ミシマサイコの根は自律神経や情緒のバランスを改善するとして多用されます。血の流れが悪い人でも、肩こりや頭痛、冷えなどが見られ、さらに舌の色が暗くなる、しこりができやすいといった特徴があります。紅花や桃の種、シナモンなどは血の流れを改善する生薬として用いられます。また気の流れと血の流れは連動するので、同時に治療していくことが有効と考えられます。身体を温めると症状が緩和する方では、ショウガや高麗人参なども利用します。そのほか体力の低下や貧血など、それぞれの体質を考慮し、全体的にバランスを整えることが大切です。

ミシマサイコ写真:ミシマサイコ 野生種は絶滅危惧種となっている

Natural Life No.127
(株)エーエスエーとちぎ中央発行『らいとプラザ』2022年12月号に掲載