漢方日記

冬至の頃に収穫する女貞子《NaturalLife133_’23.12》

一年の中で最も日の短い冬至。柚子湯に入ったり、「ん」の付くれんこんやなんきん(かぼちゃ)を食べたりする習慣がありますね。今年の冬至は12月22日です。

冬至とは逆に、一年の中で最も日の長いのが夏至です。中国医学にはこの冬至と夏至にちなんだ処方があります。二至丸(にしがん)という処方です。含まれる生薬は女貞子(じょていし)という生薬と、旱蓮草(かんれんそう)という生薬です。二生薬のみのシンプルな処方です。

女貞子はトウネズミモチという常緑高木の果実です。トウネズミモチは中国原産で、日本に自生するネズミモチに酷似します。トウネズミモチもネズミモチも庭木や街路樹に利用される樹種で、比較的身近な植物といえます。ネズミモチの実は和女貞子と呼ばれて区別されますが、こちらも民間薬として利用されます。両種の果実は晩秋から黒く熟します。その姿形がネズミの糞を連想させ、全体がモチノキに似ていることがネズミモチの名の由来と言われています。また女貞子という名称は、トウネズミモチの中国名である「女貞」の実であることを意味し、女貞の由来は冬をしのいで緑の葉を蓄えている様子を貞節な女性になぞらえたという説があります。

女貞子の効能について、約二千年前に書かれた『神農本草経』には「中を補い、五臓を安んじ、精神を養い、百病を除く」とあり、現代の中国医学では肝・腎の二臓を強くし、体の血や潤いを補うとされています。具体的には白髪や、火照り、寝汗、不眠、乾燥肌、便秘などに応用されます。ただし日本における漢方処方には女貞子を含むものはなく、ときに健康食品などに含まれることがあります。

旱蓮草はキク科のタカサブロウという野草の地上部です。タカサブロウはアジアに広く分布し、日本では田畑の雑草とされる地味な植物です。しかしかつてはおひたしにして食べた地域もあったようで、徳川家光が好んだという逸話も残されています。旱蓮草と女貞子の効能は類似しており、旱蓮草にはさらに止血作用があるとされています。

冬至の頃に収穫時期を迎える女貞子と、夏至の頃に収穫時期を迎える旱蓮草の組み合わせということで、二至丸(にしがん)という名称が付けられたということです。二至丸の効能は前述の女貞子の効能を強めたものであり、とくに病的な白髪への用法が有名です。ただし女貞子、旱蓮草ともに体を潤すことで火照りを鎮める働きがあるとされており、逆に冷え症や下痢軟便などの状態には不向きですので、これらを含む健康食品などを用いる場合には注意が必要です。

写真:女貞子(トウネズミモチの果実)

Natural Life No.133
(株)エーエスエーとちぎ中央発行『らいとプラザ』2023年12月号に掲載