漢方日記

冷え症の漢方と食養生《NaturalLife145_2025年12月》

あれほど暑くて長い夏でしたが、ちゃんと寒い冬がやってきました。急に寒さくなったので心身の調子を崩された方も少なくありません。冷え症の方では、冷えそのものも辛いのですが、加えて入眠困難や免疫力の低下などにつながる恐れがあります。免疫力が低下すれば、かぜやインフルエンザなど、感染症のリスクが高まります。

体を冷やさないようにショウガやシナモンを活用するといったことは、漢方的にも理にかなっています。ショウガを乾燥したものは生姜(しょうきょう)という生薬になり、体を温めるだけでなく、発散作用もあってカゼの予防に役立ちます。ショウガを蒸してから乾燥させると乾姜(かんきょう)となり、より体を芯から温めます。漢方で用いる桂皮(けいひ)はシナモンの一種で、同様に体を温めたり、発散作用を利用して感冒に用いられたり、また血流を改善するなど、重要な生薬です。その他、胡椒や唐辛子なども体を温めますが、これらの効果は一時的ですし、もし辛いものを摂りすぎてしまうと、胃を傷める恐れがあります。

根本的な改善を図るには冷え症の原因を考えなくてはいけません。冷え以外の体調にも目を向けて全身で検討します。するといくつかのタイプに分けることができます。

①体力不足タイプ:筋肉の少ない女性や高齢者に多く、過労などでも生じます。筋力を落とさぬよう運動と休養のバランスが大切です。漢方では薬用人参や鹿の角などを用います。

②血の不足タイプ:月経のある女性や胃腸の弱い方に多く見られます。検査で貧血を指摘されなくても、立ちくらみや目の乾燥、便秘などがあると、血の不足を疑います。胃腸を丈夫にして血の生成を促す必要があります。無理なダイエットや夜更かしは禁物です。漢方では当帰(とうき)や芍薬(しゃくやく)が血を補う代表的な生薬です。

③血行不良タイプ:運動不足や食生活の乱れなどで生じます。甘い物や油物を控えめにして、適度な運動を習慣にすることをお勧めします。漢方では桃のタネである桃仁(とうにん)やベニバナの花弁である紅花(こうか)が代表的な血流改善の生薬です。

④神経質タイプ:ストレスや緊張などによって手足の先が冷たくなります。状況によって程度が変化し、逆に体内にほてりを感じることもあります。自律神経のバランスを整えるべく、規則正しい生活やリラックスする習慣を取り入れましょう。漢方では柴胡(さいこ)という生薬を多用します。

これらのタイプは必ずしもきれいに分かれるわけではなく、複数のタイプにまたがっている方もおられます。いずれのタイプでも旬の食材から様々な栄養素を摂取しましょう。ビタミンEは末梢血管を拡張させ血行を良くします。ビタミンCは鉄の吸収を促して血の不足改善に役立ちます。ビタミンB1は代謝を促進して体を動かすエネルギーを作ります。タンパク質は体温維持に役立ち、筋肉の材料になります。思い当たる改善点があれば、ぜひ取り組んでみてください。

写真:(左)生姜 (右)乾姜

 

 

 

Natural Life No.145
(株)エーエスエーとちぎ中央発行『らいとプラザ』2025年12月号に掲載

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会