漢方の考え方
痔の漢方薬《知って得する漢方16_’07年12月》
痔は,老若男女を問わず,意外に患う人の多い病気です。命に関わる疾患ではありませんが,日常的な不快感や不便を伴いますね。
痔の治療に用いられる漢方薬には,塗り薬もありますが,飲むことによって体の中から治して行くことを得意とします。痔の原因となる血行不良や冷えを改善しようということです。
痔の原因
- 飲食の不摂生:お酒,辛味,砂糖類,肉類,冷たい物などの過食は,胃腸の消化吸収機能を失調させ,代謝が悪くなります。そのために血行が悪くなったり,粘膜が弱くなったりして,痔につながると考えられます。
- 大便の失調:長期にわたる便秘や下痢などにより排便時間が長くなると,肛門周囲の組織が圧迫され,血流が悪くなり,痔を形成する原因となります。痔の予防や治療にはスムーズな排便が大切です。
- 運動・姿勢の問題:座ったままの生活や立ち仕事,重荷を持って長く歩くなど,偏った姿勢・運動が続くと,体内の循環が停滞し,痔の原因となります。
- 妊娠・出産:出産に伴う肛門周囲の血流の圧迫や,体力の消耗により,痔となることがあります。
- 慢性疾患:血行不良や冷えを招く慢性の疾患では,痔を引き起こす恐れがあります。
痔に頻用される漢方薬
- 槐角丸(かいかくがん):槐角(かいかく・エンジュの果実)を中心とした痔専門の漢方処方で,消炎・止血・止痛の作用があります。槐角には消炎止血に優れるルチンが含まれています。ルチンはソバなどにも多く含まれ、血管を丈夫にしたり、血圧を下げるなどの効果が注目されています。
- 乙字湯(おつじとう):通便作用と消炎止血作用があり,痔疾の便秘改善に頻用されます。
- 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう):止血作用にすぐれます。体を温め,血を補う作用もあります。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):胃弱で体力不足な方の化膿性のはれ物の治癒を助けます。また,脱肛に多用されます。
- 紫雲膏(しうんこう):痔の外用薬として用いられます。火傷や切傷にも有効。