漢方日記

「水」のお話《知って得する漢方44_’10.4》

漢方には,人間の体が「気(き)・血(けつ)・水(すい)」から構成されるという考え方があります。前々回の本欄では「気」について,前回は「血」についてご紹介しました。そして今回は「水」に関するお話です。

水の生成と働き

水とは体内の水分を広く意味します。その働きは体に潤いと栄養を供給することです。飲食物から吸収された水分や栄養分が生体成分としての水の原料です。生成された水は,五臓六腑の働きによって全身に送り届けられます。その水の量や流通が正常であれば,各部位は潤い,スムーズに機能を果たすことができると考えられます。

さらにもう一つ,水には冷却水としての役目もあります。体の様々な機能をつかさどる「気」が,オーバーヒートを起こさないためには,気と水とのバランスが大切なのです。

水の失調

水が不足した場合,顕著な現象として皮膚の乾燥や,口・のど・鼻など粘膜の乾燥が発生します。腸の水が不足すれば大便は硬くなり便秘の原因になります。さらに冷却水の不足ですから,体が火照る傾向も見られます。とくに手足のひらに火照りを感じやすくなると言われています。

逆に,水の過剰も問題です。とくに消化器系や呼吸器系では水の停滞が起こりやすく,食欲不振,軟便,吐き気,車に酔いやすい体質,唾液が多い,大量の痰や鼻水などの症状が引き起こされます。むくみやめまいも水の過剰あるいは部分的な停滞が原因となることが多いです。体が冷えていると水が過剰になる傾向があり,体はそれを排出して自身を温めようと尿量を増加させます。これら余分な水分は水毒と総称されます。

水の治療の注意点

水の不足なら水を飲めば良いのかというと,決してそうではありません。必要な水の不足と,水毒の存在が併発する方も多く,そのような場合には水分を多量に摂っても,水が補われる以上に水毒が増えてしまう恐れがあるのです。漢方では吸収した水分を有効に利用できるような薬草を用いたり,水分代謝に関わる気を強化するなどの対策を講じます。