漢方日記

身土不二(しんどふじ)の考え方《NaturalLife2_’10.7》

漢方などの伝統医学や,民間療法,自然食などに関する話題の中で,時折耳目に触れる言葉に「身土不二」があります。身体と生きる環境は一体であり,身体を養う食べ物は自分の住む土地のもので全てまかなうという考え方です。

伝統医学の中で身土不二を最も重んじているのはインドのアーユルヴェーダです。普段の食事も,治療に要する薬草も,自分の住む土地から求めます。昨今このアーユルヴェーダを日本で実践する人もおられますが,インドの薬草を日本で用いたのでは身土不二の原則に反します。

一方中国ではどうかといいますと,あまり身土不二にはこだわりがないようです。紀元前3世紀,秦の始皇帝の命を受けた徐福が,不老長寿の仙薬を探し求めて朝鮮半島を経て日本へやってきたという伝説が残っています。また現在,中国でも日本でも,漢方で使用される生薬はかなりの広範囲から集められているのも事実です。

動植物は各季節,各環境に応じた姿を呈します。動物達がそれぞれに暮らす環境の中で各季節に採れるものを食べるのは,自然界では当然のことであり,昔の人々にとっても当たり前のことであったはずです。その季節を乗りきる力を持った旬の食材は,身体の維持に必要不可欠なものなのではないでしょうか。ですから身土不二に基づく食事は基本であり,かつ重要と考えられます。流通が盛んで,他の地域・季節の食材が簡単に手に入る現代だからこそ,あえて叫ばれているのでしょう。

また病気の治療においても,動物は調子の悪いときに食べるものを知っているという話も聞き覚えがありますが,漢方を実践する立場で考えますと,日本の薬草だけであらゆる病気に対応するのは心許なく感じられます。病気という異常事態においては,他の地域のものでも,明らかな作用を有するものを用いて治療をすることを選択すべきと考えます。

外国の食材や調理法も,私たちに喜びや楽しみを与えてくれますし,現代においてはもう欠かせない存在といえるでしょう。私はよく,旬の和食が健康にいいと申し上げてますが,それはあくまで基本です。基本となる食事で体調を整えつつ,時に外国の料理を楽しむ,そんな食生活が理想的な気がします。

本来,身土不二は仏教用語で,「身」(今までの行為の結果)と「土」(身がよりどころにしている環境)は切り離せないという意味だそうです。食と健康の因果も切り離せません。

執筆者情報

毛塚 重行

研究報告・講演等

翻訳

    東洋学術出版社『中医臨床』

  • 小児疾患と湿熱の関係
    (中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英)
  • 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍)
  • 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
    (中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧)
  • 解表剤運用の心得
    (中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠)
  • 中医による難治性眼疾患の治療効果
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院)
  • 眼科領域における退翳明目法の応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉)
  • 「明珠飲」による内眼疾患の治療
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?)
  • 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄)
  • 明目地黄丸および益精昇陰法
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他)
  • 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他)
  • 眼科領域における細辛の臨床応用
    (中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛)
  • 慢性前立腺炎の治療
    (中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福)
  • 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
    (中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他)
  • 糖尿病性腎症の4大病機
    (中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧)
  • 「気」の中医的概念と理気の方薬
    (中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦)
  • 「辛開苦降」の意味
    (中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武)
  • 「風薬治血」-風薬による血病治療
    (中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶)
  • 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
    (中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌)
  • 補陽還五湯の応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華)
  • 黄耆の運用経験
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春)
  • 黄耆の医案3例
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌)
  • 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
    (中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸)
  • 応用範囲の広い温胆湯
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南)
  • 温胆湯の症例報告
    (中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)

薬剤師・薬学修士・国際中医専門員

Shigeyuki Kezuka

学歴
東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002)
職歴
吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 )
所属
日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会