逍遙記
紫根(しこん)報道の反響と問題点《NaturalLife3_’10.8》
6月末,突如として紫根(シコン:ムラサキ科ムラサキの根)という薬草が注目を浴び,連日問い合わせが続きました。紫根が肌のシミや荒れに効果があるとテレビで紹介されたためです。テレビの反響による一時的なブームはよくあることですが,今回は異常な盛り上がりでした。
番組の内容はある女性の体験談でした。38歳の時に心身の失調から肌が酷く荒れ,医師からは更年期障害と診断されます。紫根の煎じ液を顔に塗るようになってから肌荒れが改善し,心身も健康になり,それから10年以上経た現在も美しい肌を保っているという内容でした。私は実際の放送を見ていなかったのですが,翌朝からの電話の多さに,一体何事かとインターネットで調べて事態を知ったのでした。
紫根は確かに昔から皮膚病に使用されます。日本では特に紫根を胡麻油で煮だし,豚脂や蜜蝋などを加えて軟膏とした物が有名で,擦り傷や火傷,痔などに有効です。また化粧品にも配合されることがあります。
しかし紫根の煎じ液を塗り続けただけで,本当に上述の体験談のようなことが起こるのかというと,それは甚だ疑問です。外傷を除き,肌の症状は体内の問題に起因することが多く,この体験談でも更年期障害と診断されたとあるように,ホルモンや自律神経のバランスが崩れていたと考えられます。これらの状態を改善することこそ根本的な治療であり,それなくして症状の改善は望めないと思うのです。
また,使用方法や販売方法にも問題があります。1回の煎じ液が1ヶ月分と放送されていたのですが,通常煎じ液は1~2日で使用します。冷蔵庫で保管してもせいぜい1週間でしょう。保存料も入れずに,1ヶ月も使い続けるのは,細菌の繁殖などで逆に肌にとって危険なこととなってしまいます。また薬品である以上,それに適した販売方法があり,勝手気ままに販売できるものではないのです。法的な解釈なども関わる部分があり,説明は難しいのですが,薬屋としては売りにくいものでもあります。
こういった事情を酌むことなく,無配慮に放送されたことに憤りを感じながら,私はお問い合わせのあるたびに販売をお断りしました。
放送から1ヵ月が過ぎ,お問い合わせも減ってきたと同時に,煎じ液が臭い,色がつく,湿疹が出たといった苦情が寄せられているという話が聞こえてきています。テレビでやっていたからとりあえず使ってみたいというお気持ちも理解できますが,まず不調の原因を探り,最適の方法を検討することが大切なのではないでしょうか。
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研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
(中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武) - 「風薬治血」-風薬による血病治療
(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
(中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌) - 補陽還五湯の応用
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(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春) - 黄耆の医案3例
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌) - 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
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(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南) - 温胆湯の症例報告
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)
毛塚薬局勤務(2002~2005)
さくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)
国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
